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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】ログリッチがマイヨ・ジョーヌを堅持して、いよいよ舞台はクイーンステージへ「明日は暴力的なフィニッシュが待っている」(ポガチャル) / 第16ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかレナード・ケムナ
「カラパスの加速はとてつもなかった。振り落とされるかもしれないと思ったよ。でも彼のスピードが落ちたように感じたんだ。もはや力が尽きたようにさえ見えた。だから『よし、今こそ彼を振り払う時だ』と考えた。それに短い下りと平坦が待っていることを知っていたから、全力で飛び出した」(ケムナ)
山頂での急襲に、カラパスは一瞬動けなかった。そして自らの後輪から光のように駆け出して行ったケムナの姿を、もう2度と見ることはなかった。必死に追走を続けるも、差は開いていくばかり。なにしろ1週間前に24歳になったばかりのケムナは、独走は大の得意なのだ。ジュニア時代には個人タイムトライアルで世界王者に輝き、U23時代には同種目で欧州の頂点に立ったことがある。
第13ステージで山頂「一騎打ち」スプリントに敗れ、2位に泣いた経験から、ケムナは絶対にひとりでフィニッシュに向かうと決めていた。下りを大段に攻め、最後の3級ヴィラール・ド・ランの登りでも、決して気を抜かなかった。ちょうど1か月前の8月15日に、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでプロ初勝利を手に入れたのは、やはりアルプスの山頂フィニッシュだった。この9月15日には、ツール・ド・フランスでの初勝利を、アルプスの山の上で祝った。最終的にはカラパスに1分27秒差をつけた。
16分48秒遅れでゆっくりとフィニッシュラインにたどり着いたメイン集団内で、小さな反乱がなかったわけではない。1級峠では総合11位ギヨーム・マルタンが、ニコラ・エデの助けを借りてタンデムアタックを打ったこともある。ただ、あくまでも、ログリッチを運ぶユンボ山岳列車が淡々と2人を回収した。また残り2kmでは、ポガチャルが攻撃に転じた。ダビ・デラクルスに引かれ、勾配10%ゾーンで試みた強烈な一発だった。ただログリッチ自らが、待ってましたとばかりに反応する。すぐにワウト・ファンアールトも先頭へ戻ってきて、事態を収拾する。
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