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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】マルティネスが素敵なリベンジで山頂にハートを描く。マイヨ・ジョーヌのログリッチは「僕にとってはスロベニアデー」 / 第13ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか第7ステージの風分断の遅れを取り戻したいポガチャルは幾度も加速を切り、あらゆるライバルに最大限のタイム差を突きつけたいログリッチは、積極的に先頭交代を引き受けた。2人は区間勝者の6分05秒後に揃ってフィニッシュラインを越えた。その13秒後にポートとランダが、16秒後にロペスが山頂にたどり着く。ベルナルはウランと共に38秒後にステージを終えた。
総合2位以降の順番は大きくシャッフルされた。ポガチャルが7位から2位へと一気に浮上し、つまりベルナルから2位の座と新人賞ジャージの両方を奪い取った。これまでログラとの違いは「ボーナスタイム差」の21秒のみだったベルナルは、59秒差の総合3位に一歩後退。総合4位以降はウラン、ナイロ・キンタナ、ロペスと続く。すなわちスロベニアの上位2位独占の次に、コロンビア人が4人連続で並ぶ。
それぞれ2分半以上を失ったマルタンとバルデは二桁順位に押し出され(バルデは総合11位のままリタイア)、つまりフランス人トップ10が完全に消えていなくなった。代わりにリッチー・ポートとエンリク・マスが圏内にイン。ちなみに前日までは1位から総合10位のタイム差が1分42秒だったが、第13ステージ終了後は7位アダム・イエーツがちょうど1分42秒差につける。
プリモシュ・ログリッチ
ただプリモシュ・ログリッチの総合首位の座だけが不動だった。2位以下に対するリードは21秒から44秒へと拡大し、「僕にとってはスロベニアデー。2人のスロベニア人が、ツールの上位2つの座につけていなんて最高だね」とご機嫌な表情を見せた。もちろん、いつも通りに、慎重なセリフを繰り返すのも忘れない。
「ツールはまだ終わってはいない。たくさんのことがまだまだ起こる可能性があるし、他の選手が総合上位に躍り出てくる可能性もある。僕自身は『一番の危険人物は誰か』を探すのではなく、ただ自分のすべき仕事をしていく」(ログリッチ)
ポイント賞と山岳賞のジャージも変動はなかった。序盤に逃げを試みながらも、結局は1点も取れずプロトンへ戻ったブノワ・コヌフロワだが、フィニッシュの山では大いに観客を煽って楽しんだ。緑のサム・ベネットはチームメートの協力を得つつ、最下位ながら無事に厳しい1日を乗り越えた。
ところで2020年の黄色を巡る争いは、赤から逃げる戦いでもある。前夜にフランスの24時間の新規感染者数が約1万人に達し、ツール開幕時は21県だったレッドゾーン(人口10万人に対し週当たりの新規感染者50人以上)が、9月11日の政府決定により75県中42県に拡大した。この日ステージが走り出したピュイ・ド・ドーム県も、新たに赤色へと変わり、たとえば第14ステージはコース上に待ち受ける3つの県が全て該当する。また第15ステージの最終2峠は、県令により、観客の立ち入りが完全に禁じられた。ツールの「泡」よ、パリ到着までのあと9日間は、どうか弾け飛ばないで。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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