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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】マルティネスが素敵なリベンジで山頂にハートを描く。マイヨ・ジョーヌのログリッチは「僕にとってはスロベニアデー」 / 第13ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかまた首位から30秒差の4位と奮闘するバルデは、しばらくその場から立てなかった。幸いにチーム全員の尽力で集団復帰を果たし、苦しみながらも最後まで走り切ったが……当夜遅く、「脳震盪」による帰宅を発表した。地元オーヴェルニュの知り尽くした道を走り、妻と子供が沿道に応援に駆けつけた今区間が、つまりバルデがAG2Rジャージでツールを走る最後の1日となった。残念ながら今年も、マイヨ・ジョーヌは着られなかった。
ステージ後半に入ると、イネオス・グレナディアーズがギアを切り替えた。今大会、風の強い平地で幾度も牽引を披露したディフェンディングチャンピオンチームは、この日は起伏で驚異的なテンポを刻む。逃げ集団が決定的に動いた6番目のナロンヌ峠の、山頂まで1kmの10%超ゾーンに差し掛かると、たまらず数人の有力者たちが遅れ始めた。総合4位バルデはもちろん、フランス最後の希望、3位ギヨーム・マルタンさえも後方へずるずると後退して行き……。途端にユンボ・ヴィスマが主導権を奪い返す。山頂まではわずか10秒差でなんとか追いかけていたマルタンだが、「続く平地と下りで完全に息の根を止められた」。
しかし混沌とした戦いに、大きな風穴を開けたのは、またしても例の若者だった。最終ピュイ・マリーの、山頂までおよそ2kmを残した時点で、タデイ・ポガチャルが猛然と加速を切る。反応できたのは、ただマイヨ・ジョーヌのプリモシュ・ログリッチだけ!
「最終峠では全力を尽くそうと考えていた。ログリッチが一緒に来てくれたおかげで、数秒稼ぐことができたよ。ログラは非常に強かった。ついていくだけで精一杯なほどだった」(ポガチャル)
12%近い急勾配のせいか、一気に絶望的なほどの距離は開かない。しかし、ほんの目の前に見えるスロベニアコンビを、ライバルたちは決してとらえることもできない。リッチー・ポート、ミケル・ランダ、ミゲルアンヘル・ロペスはそれでも必死に数秒遅れで食らいついた。しかしアシストたちを半日たっぷり働かせたエガン・ベルナルは、「調子も良かったし、データも見る限り、かなりいい数値が出ているのに」、後方で苦痛の表情を見せるだけ。
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