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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】堂々たる王者たちの張り合いは、最後の一瞬で均衡が崩れた。完全に自分の軌道を最後まで貫いたユアン「タイミングも場所もまさしく正解だった」 / 第11ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかフィニッシュ前のスプリント勝負
幸いにも昨欧州王者エリア・ヴィヴィアーニ擁するコフィディスや、現欧州王者ジャコモ・ニッツォーロ率いるNTTプロサイクリングも追走に協力した。おかげで、残り2kmで、2チームの企ては打ち止めとなるが、もはやカオスは止まらない。この日を逃すともはや第19ステージまで..いや、もしかしたら最終日シャンゼリゼまで、スプリンターたちには一切のチャンスがない。だからこそCCCやBBホテルズ・ヴィタルコンセプトも必死で主導権争いに加わった。まるで統制の取れぬままに、プロトンは最終ストレートへと雪崩れ込んだ。
列車も発射台もないスプリントは、まさにエースたちによるバトルロイヤル。最初に加速を切ったのはファンアールトだった。一瞬で自転車1台分ほど離されたベネットだが、すぐにスプリントで追い上げた。サガンはファンアールトの右側から、フェンス際に攻める道を選んだ。
堂々たる王者たちの張り合いは、しかし、最後の一瞬で均衡が崩れる。スペースのないサガンの左肘がファンアールトの背中に軽く接触し、さらには上半身をまるまるもたれかけた。幸いだったのは2人とも落車しなかったこと。ただサガンは態勢の立て直しに手間取ったし、左側に無理に押しやられたファンアールトは、間違いなくハンドルを投げるタイミングが一歩遅れた。ついでに言えば、ベネットも余波を受けてほんの少し左側に流れた。
一方のユアンは、実は、他の3人が動き始めた瞬間ほんの少しだけ減速し、一旦ベネットの背後に隠れている。しかも右方向へと動きかけながら、瞬時に方向転換すると、左前方へ勢いよく飛び出した。
「かなり最前列にいた。でも、自分が希望していた場所よりも、少し前にいすぎるように感じんだ。だからあえて後退して、状況を見渡した。冷静に、飛び出すべきスペースを見極めた。かなり遠くからの加速だったけれど、タイミングも場所もまさしく正解だった」(ユアン)
つまり一番大外の左側を突いたユアンだけが、完全に自分の軌道を最後まで貫いた。あとは今大会2つ目の勝利へと向かって、両手を精一杯伸ばし、ハンドルを投げるだけでよかった。
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