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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】堂々たる王者たちの張り合いは、最後の一瞬で均衡が崩れた。完全に自分の軌道を最後まで貫いたユアン「タイミングも場所もまさしく正解だった」 / 第11ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか完全にラダニュはひとりになった。元マディソン世界ジュニア王者には、ハンドスリングする相手さえいなかった。それでも引き下がるつもりはなかった。「なにもすることのないステージ」だと分かってはいた。ただなにかやらずにはいられなかった。初日の落車で体を痛め、ピレネーでタイムを大きく落としたティボー・ピノの総合争いは終わってしまったけれど、グルパマ・FDJのツール・ド・フランスは決して終わってはいないのだ。
「昨日はキュングが逃げた。今日は僕が前に出た。みんなものすごくモチベーションが高い。なにかしてやりたい、区間を勝ちたい、ってね。まだツールは10日もある。この先に素敵な山岳ステージも残ってる。チームみんなで区間優勝を絶対に持ち帰るよ。それにしても、1人で逃げたのは、生まれて初めての経験だった。だから楽しんだよ」(ラダニュ)
幸いにもフランスの小中学校はたいてい水曜日はお休みで、沿道にはいつもの平日よりもほんのちょっと観客が多かったから..応援の声にも背中を押されたはずだ。悠々3時間半も逃げた。そしてフィニッシュまで約43kmを残し、静かに集団に飲み込まれていった。
120kmもの独走中、なにもプロトンはずっと退屈していたわけではない。今大会のツール前半戦をまさに象徴するかのように、中間ポイントでは激しいスプリントが繰り広げられた。第10ステージ終了時点でのマイヨ・ヴェールランキング上位4名、すなわちベネット、サガン、ブライアン・コカール、そしてマッテオ・トレンティンが、揃ってポイント目掛けてもがいた。しかもトレンティン以外は、誰もが発射台付きという超本気。さらにベネットの次点には専門発射台ミケル・モルコフが滑り込み、ライバルのポイント潰しも忘れない入念さ。おかげで緑の国からきたベネットは、緑ジャージのリードを21pt→25ptへとさらに拡大した。
つまりはステージ優勝を争った4人とは、半分の顔ぶれが異なった。ファンアールトにとってはもちろん、今ツール最大の任務は、黄色をまとうプリモシュ・ログリッチのアシスト役。「将来的にはマイヨ・ヴェールも争いたいな」と2勝目の直後に語ったが、あくまでも将来の話である。またユアンも、第3ステージで区間1勝目を上げた時点で、「いまのところポイント賞に全く興味はない」と語っていた。宣言通りポケットスプリンターが中間ポイントを獲りに行ったのは、この11日間で、第5ステージのわずか1日だけ。
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