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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】スロベニア人によるワンツーフィニッシュ!初マイヨ・ジョーヌのログリッチ「最高にハッピーだ」 / 第9ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかマルク・ヒルシはすでに、スタート9.5km地点の4級峠からの下りで、一瞬ながら単独特攻を試みていた。そして1時間半もの猛烈なバトルの末に、とうとう、ウルセール峠の上りで独走体制へと持ち込んだ。
「僕らのチームは総合を争いに来たわけじゃない。区間勝利を獲りに来た。特に今日は逃げが最後まで行ける可能性があったからこそ、絶対に逃げに乗る必要があった」(ヒルシ)
後方からはジョナタン・カストロビエホ、レナード・ケムナ、ダヴィ・ゴデュ、ダニエル・マルティネス、ワレン・バルギル、セバスティアン・ライヒェンバッハ、ダヴィデ・フォルモロ、オマール・フライレといったそうそうたる実力者の8人が追いかけてきたし、さらにその後ろではユンボ・ヴィスマ隊列が高速テンポを刻み続けた。しかしタイム差は順調に開いていく。
上れるだけではない。なにより3級スデ峠からの長い長い下りで、ヒルシは真価を発揮した。小雨で路面は濡れ、霧のせいでひどく視界は悪かった。しかし2018年U23世界選手権を見事なダウンヒル攻撃でさらい取り、その約1ヶ月前のツール・ド・ラヴニールでも、スイス下り部隊の1人として総合3位ジーノ・マーダーの総合3位を補佐した22歳にとって、なんの障害にもならなかった。「まるでアルペンスキーのダウンヒラーのようだ!」と大会開催委員長クリスティアン・プリュドムが目を丸くして絶賛したほど。下りきった先で追走集団には4分差、メインプロトンには4分半もの差をつけた。
短い谷間を抜け、中間ポイントを通過し――なんと1級山岳後もメイン集団に留まったマッテオ・トレンティンが9位通過を成功させ7pt集収、首位ペーター・サガンとの差を47→40ptへと縮めた――、「前待ち組」と「区間狙い組」が上手く噛み合わぬままに追走集団がいつしか姿を消しても、ヒルシのペースはまるで落ちなかった。
そして最終峠1級マリーブランクへと上り始めると、いよいよユンボ列車が本格的な仕事を開始する。いまだ残る5人のアシストが、1人ずつ、まさに山岳スプリント並の加速を切る。ロベルト・ヘーシンクが集団を切り裂き、ワウト・ファンアールトがライバルチームのアシスト勢を次々と振り落とし、仕上げにセップ・クスがマイヨ・ジョーヌのアダム・イェーツはもちろん、ほぼすべてのエースたちを孤立状態に陥れた。さらにジョージ・ベネットが前を引く番がやって来て……。
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