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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】一瞬たりとも目が離せないペーター・サガンが仕掛けた一流のショー「上手く行くこともあれば、行かないこともある」 / 第7ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか「チームがスタート直後から素晴らしい仕事をしてくれたからこそ、勝てなかったことに失望している。でもレースの成り行きは毎回違うからこそ面白いんだよね。上手く行くこともあれば、行かないこともある。まだまだツールは長いんだ」(サガン)
勝利を逃しただけではない。つまりこの第7ステージで最大限に収集できるマイヨ・ヴェールポイント70点のうち、サガンは21点しか取れなかった。ちなみに2019年大会は2位とのポイント差が68点だったから、損失は決して少なくない。もちろん自らのマイヨ・ヴェールはきっちり取り戻した。2位ベネットとのポイント差は9pt。ピレネー前に済ませるべき最も大切な仕事には、成功したのだ。
奇妙にもブライアン・コカールもラスト600mでのチェーン脱落を経て、スプリントに飛び込んだ。ボーラの集団牽引に、唯一協力したB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトのエースは、しかしあと一歩、追い上げが足りなかった。ボアッソンハーゲンと共にハンドルを投げたが、その前で悠々とフィニッシュラインを駆け抜ける男がいた。
フィニッシュ後に両手をあげるワウト・ファンアールト
「スプリンターの数が少なかったし、なにより列車要員がいなくなってた。だから勝算ありと踏んだんだ。風は左から吹き付けていて、右側にまだスペースが残っていた。そこにあえて飛び込んだ。すでに1勝してたからこそ、大胆にリスクが冒せた」(ファンアールト)
2日前にピュアスプリンターを蹴散らしたファンアールトが、なにより1年前の、やはり風分断でクレイジーだった第10ステージを制した元シクロクロス王者が、再び両手を上げた。今大会すでに2勝目。ユンボ・ヴィスマにとっては7日間で早くも3つ目の勝利だった。
ちなみに「君がチームエースになったら?」「今年マイヨ・ヴェールを狙えるんじゃない?」なんていう質問攻めに、10日後に26歳の誕生日を迎えるファンアールトは笑って「いつかね」と答える。果たして「自転車選手の言ってることを信じちゃダメ」なのだろうか。
「将来は僕だってマイヨ・ヴェールを狙ってみたいけど、今年はチームメートの総合優勝のために働くから無理!」(ファンアールト)
ピレネー2連戦の前日、肝心のチームエース、プリモシュ・ログリッチは危なげなくトップ集団で1日を終えた。また2度目の分断で1人になりながらも、アダム・イェーツもしっかり先頭に踏みとどまり、3日目のマイヨ・ジョーヌ表彰式へと臨んだ。一方でポガチャル、モレマ、ランダ、ポート、カラパスは風の中で1分21秒を失い、総合順位は大きく後退。2度目の山頂フィニッシュを終えた前日は総合1分以内に22人ひしめいていたが、平坦ステージで15人へと一気に数を減らした。
文:宮本あさか
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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