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【プロトンは必ずやって来る!!】Cycle*2013 パリ〜ルーベ カンチェラーラ引退特別番組 〜スパルタクス 伝説の軌跡〜
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか2012年大会を制したトム・ボーネン
3週連続の石畳クラシック優勝はまた、史上10人目のフランドル&ルーベ2大モニュメント同一年制覇だった。その2年後の2012年、ボーネンがこれを上回る快挙をなしとげる。人生2度目の2大モニュメント同一年制覇はもちろん、4大パヴェクラシック(E3、ヘント〜ウェヴェルヘム、フランドル、ルーベ)を完全独占。特にルーベでは史上最多タイとなる4度目の栄光をつかみとった。
翌年はカンチェラーラが大暴れする番だった。またしてもE3→フランドルで全てをなぎ倒した。一方でオフ中に左肘を痛めたボーネンは、石畳シーズンになんとか間に合わせたが、ヘントとフランドルで痛恨の落車リタイア。ルーベには姿を表さなかった。前年から本格的なクラシック参戦に乗り出し、E3とフランドルで次点に食い込んだた当時23歳のサガンも、ルーベは回避した。
その代わりスパルタクスの前に立ちはだかったのは……残り全員!「全プロトンvs僕。こういう構図になるだろうとあらかじめ分かってた」と、優勝記者会見で振り返ったように。
あらゆる方面から攻撃の手は伸びてきた。多くのチームが揺さぶりをかけた。おかげでとてつもなくハイスピード戦が繰り広げられた。カンチェのアシストたちは早い段階で疲弊し、脱落していった。残り50kmでエースは完全に孤立した。周りにはオメガファルマが4人も残っているというのに。
「これは戦争だ」。カンチェは冷静に腹をくくった。なにしろ2011年大会で「俺を勝たせないならお前らも絶対に勝たせない」と、執拗にマークしてくる敵もろとも自爆したほどの豪傑だ。そのせいか否か。決して協調しようとしないライバルたちは、次々と不運の連鎖へ巻き込まれていく。最後までかろうじて生き残ったヴァンマルクケも、まさに蛇に睨まれた蛙のような状態だった……と後に告白している。
大歓声の自転車競技場へ飛び込んだカンチェは、格の違いをまざまざと見せつけた。24歳の若者を残酷にも蹴散らすと、大地にごろりと寝転んだ。
「自己の限界を超えてはるか向こう側まで突き抜けた。だから地球に帰ってくるまでに、1分ほど時間が必要だったのさ」
自身にとって2度目のフランドル・ルーベ同一年制覇であり、最後のルーベタイトルだった。翌年もう1度フランドルを勝ち取るが、ルーベは3位に終わった。そして人生最後のルーベを40位で走り終えた4ヶ月後、ライバルのボーネンよりも約1年早く……2016年リオ五輪個人タイムトライアルの金メダルで、その輝かすぎるほどのキャリアを締めくくった。
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