人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2020年3月16日

【パリ~ニース:レビュー】混乱極まるも奇跡的な熱戦!シャフマンが人生初の総合優勝で有終の美!

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line
プロトン

ついにWHO世界保健機構から「パンデミック」宣言が出た水曜日、S・クラーウアナスンが15.1kmの個人タイムトライアルを勝ちとった。なにより初日から黄色いジャージを着ているシャフマンが区間2位に食い込み、総合2位以下とのタイム差を58秒へと広げた。

レースはどんどん熱くなる。5日目は220km以上も逃げ続けたトラトニクを、N・ボニファツィオがラスト25mで抜き去った。地元サンレモを走れない悔しさを力に変え、苦境を強いられている祖国イタリアに「小さなプレゼント」を贈った。

同時に国際状況はいよいよ深刻さを増していた。第5ステージの朝、プロトンが目覚めると、アメリカのトランプ大統領が欧州からの渡航停止を告げていた。ヴァンガーデレンは慌てて帰国の途につき、同国出身のクラドックは頭痛で途中リタイアを選んだ。ちなみに同じ北米人のウッズは、望まぬ落車で大腿骨を骨折。..現時点では予定通り7月末開催の東京五輪に向けて、大急ぎで回復せねばならない。

この3月12日は、さらに2つの大きな衝撃が自転車界を襲った。1つ目は初めて選手の感染が公表されたこと。UAEツアー中断以来、同国で隔離措置を取っていたガビリアが、自身のSNSにてコロナウイルス感染を告白したのだ。しかも発射台役リケーゼも感染していた。そして2つ目は、ベルギーのフランドル政府が、4月3日までのすべてのスポーツイベントを中止するよう発表したこと。すなわち一連の石畳クラシックがほぼ全滅したことを意味する(この時点でツール・デ・フランドルはかろうじて開催可能だった)。

そして同日20時、フランス共和国のマクロン大統領が、国民に向け「1世紀ぶりに我が国に訪れた最悪の衛生危機である」と訴えた。さらに翌日には同国のフィリップ首相が、100人以上の集会禁止を命じた。

この禁止令を受けて、第6ステージのスタート前に、2020年パリ〜ニースが第7ステージのフィニッシュをもって終了することが発表された。報道によれば、開催委員会は出場チームに意向を問うたそうだ。結果は続行派11、即時中止派5だったとのこと。

いよいよ山場に入った戦いで、バルデやニバリが無謀なほどまでに積極的に動いたのは、きっと偶然ではなかった。すでに前日の段階で、2020年ジロ開幕地ブダペストが、序盤3ステージの中止を決めていた。この13日の昼過ぎには、ジロ開催委員会から大会自体の「延期」が正式にリリースされた。イタリア一周を勝ち取るために、オフ期間から綿密な調整を積んできた選手にできることは、もはや、今のレースに全力を尽くすことだけだったに違いない。

しかし大物グランツールレーサーたちの睨み合いをかわし、最後の上りで抜け出したのはべノートだった。前方で逃げていたチームメートのクラーウアナスンにも助けられ、下りでは大胆に攻めた。やはりサンウェブのマシューズが、なんと区間2位に滑り込むという衝撃もあり(やはりサンレモ獲りに向け完璧に仕上がっていたのだと思うと無念だ)、小さな体でも序盤の雨風分断に決してひるまなかったイギータが、総合3位にジャンプアップしてきたという楽しさもあり。それでもシャフマンが、頑なにマイヨ・ジョーヌを守り続けた。

予定より1日早い最終日の朝、国境封鎖を決めたデンマーク政府からの呼びかけで、世界チャンピオンが去っていった。パリ〜ニースの136人のプロトンは、第7ステージのスタート地点..つまり2020年ツール開幕後ニースでは、もはや92人の小さな集団に成り果てていた。

翌日から少なくとも2週間は一切レース予定のない選手たちは、まるで少しの悔いも残したくないかのように、全速力で走り出した。昨夏のツールで14日間フランス国民の心を震わせたアラフィリップが、勇敢に前方へ突進し、2年連続オフに自転車旅「ファイナル・ブレイクアウェイ」を楽しんできたデヘントは、「自分のため、家族のため、チームのため、ファンのため、そして自転車界のため」、文字通り「最後の逃げ」へと繰り出した。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ