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サイクル ロードレース コラム 2019年9月3日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ 2019】意外性の連続はまさに『カオス』。序盤9日間で首位を走るキンタナ「真のマイヨ・ロホはログリッチェ」

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ナイロ・キンタナ

混乱で始まった大会1週目は、さらなる混沌で締めくくられることになる。アンドラ公国で繰り広げられた第9ステージは、そもそもが2019年ブエルタ唯一のピレネー超えだ。しかも標高2000m前後の巨大な山が3つ組込まれ、走行距離は94.4kmという短距離で、さらには最終盤に4.5kmの未舗装路が待ち受ける。序盤に30人以上の「小さなプロトン」が逃げ出し、4強全てがアシストを前方に送り込むという伏線も用意された。

その「前待ち」組を利用して、残り20km、アタックを打ったのはロペス。ぐんぐんとライバルたちから遠ざかり、一時は40秒ほどの差をつけた。モヴィスターのキンタナ&バルベルデは、ログリッチェを振り払おうと、交互に加速を切った。しかし前方から馳せ参じたユンボのアシストが、エースを献身的に支え続けた。

強烈な雨あられもサスペンスを演出した。TV中継が途絶えている間に……ロペスが未舗装区間で他選手と接触し落車。ライバルたちに対するリードを失ったばかりか、最終的にはタイムを失ってしまう。またログリッチェも同じく、停車したオートバイにぶつかって、泥と化した道の上に落ちた。

タデイ・ポガチャル

恒例のダブルエース制を貫くモヴィスターの、不可解な戦術もまた、物語の終わりを盛り立てた。序盤から逃げ出し、単独先頭を突っ走るマルク・ソレルに、残り3.5kmで予想外の無線が入ったのだ。自己の区間勝利のチャンスを投げ出し、30秒後方を走るキンタナを待てという指示に――ちなみに1回目の休息日に、キンタナの来季アルケアへの移籍が正式に発表された――、2015年ツール・ド・ラヴニール総合覇者は大喜びで従うことはできなかった。

この内輪揉めの隙を突いて、大胆な加速を切ったのが2018年ラヴニール覇者だ。すでに第5ステージでは4強に迫る強さを見せ、翌6日目にはラスト1.5kmの単独アタックで強い存在感を示したタデイ・ポガチャルは、全力で山頂まで踏み抜いた。プロ入り1年目。生まれて初めてのグランツールを走る20歳が、今大会で最も標高の高いフィニッシュ地で両手を広げた。初日の「集団落車」で1分07秒失ったポガチャルは、この初優勝で、1分42秒遅れの総合5位に浮上した。

プリモシュ・ログリッチェ

ソレルの自己犠牲のおかげで、キンタナは4強の中ではトップフィニッシュ。ブエルタでは3年ぶりの、グランツールでは2年ぶりの総合リーダージャージに袖を通した。落車で一時は遅れを取りながらもログリッチェは区間3位に滑り込み、キンタナと6秒差の総合2位につける。流血を押して走りきったロペスが総合3位・17秒差、バルベルデ総合4位・20秒差と続く。ちなみに序盤9日間で収集したボーナスタイムは、上位2人とも同じ16秒。ただしログリッチェは中間ポイントも利用し、連日コツコツ積み重ねてきた結果だ。

「休息日明けのタイムトライアルを考えると、真のマイヨ・ロホはログリッチェ」と総合首位キンタナは語る。ブエルタ2週目は、第10ステージ、36.2kmのど平坦個人タイムトライアルで走り始める。5月のジロで個人タイムトライアルを2度制したTT巧者が、ライバルクライマーたちにどれだけ差をつけるか。もちろん、この先、いまだ5つの難関山頂フィニッシュが待っている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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