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巻き込まれなかった多くの選手たちは、強制的にストップをかけられた。開催委員長クリスティアン・プリュドムが、レースカーの屋根から上半身を突き出し、両腕を大きく広げて、プロトンの歩みを抑えた。委員長本人の言葉によれば「アルバトロス(アホウドリ)のように翼を広げ、野生動物のような選手たちを制したのだ」。
「2つ目の落車が起きた時点で、4台の救急車、2台のメディカルカーは全て現場対応のために停車した。つまりは前を走るプロトンに対応できる医療隊が皆無になった。すぐにレース委員長と審判委員長との間で『レースの一旦停止』で意見が一致した。逃げ集団はすでに吸収されていたし、ステージ最初の上りにもいまだ入っていなかったからだ。こうして極めて例外的な決定を下した。極めて例外的な事態だったからである。あれほどのひどい落車の後に、さらにひどい落車が再び起こる可能性はあった。だから救急車のない状態で、選手たちを走らせるわけにはいかなかった。反対の声も上がった。もちろんだ。でも私の中では、救急車がいないと分かった時点で、即決だった。全責任を負う覚悟で下した決断だ」(開催委員長プリュドム、公式会見より)
巷で噂されたような、マイヨ・ジョーヌを待つためのニュートラリゼーションではない。またUCIルール2.2.029によれば、事故等でレースの通常の進行に支障が出る危険性のある場合、開催委員長はレースを一時的にニュートラル化する権利を持つと定められている。こうして選手たちは完全に停止し、地面に足をつけた。落車した選手たちが全員プロトンへ合流し、レース医療班の再配置も完了すると、ツールは再び走り出した。
走りながらのニュートラリゼイションなら、ツールは過去幾度も経験している。ちょうど5年前、やはりオランダからスタートしたツール3日目、ベルギーのワロニー地方を通過中に、大きな集団落車が発生した。あの時の開催委員会はレース続行を願ったが、マイヨ・ジョーヌを着ていたカンチェラーラがノーコンテストを主張した。すでに逃げていたシルヴァン・シャヴァネルに区間勝利が許され、その他選手はまとまってゴールした。またステージが完全に無効となったことも過去4回ある(1978年第12ステージ、1982年第5ステージ、1995年第16ステージ、1998年第17ステージ)。今回はゴール前50.5km地点の、4級ボイソー峠の山頂で、ニュートラリゼーションは解除された(山岳ポイントは廃止)。
その後もしばらくは速度控えめで走ったプロトンも、10kmほど進むと、再び全力疾走を始めた。総合優勝候補を有するチームが隊列を組み上げた。アスタナが分断を仕掛け、一瞬スカイが罠にはまる場面もあった。中間スプリントではコフィディスがナセル・ブアニのためにスプリント列車を走らせ、しかし緑ジャージのアンドレ・グライペルが1位通過をさらいとった。こんな風なあらゆる加速の試みと、ステージ終盤に立て続けに登場する起伏と激坂とで、怪我人たちはじわじわと後方へと押しやられていった。
たとえばカンチェラーラは、最終的に勝者から11分43秒遅れでフィニッシュへとたどり着いた。そして無言のままレース会場から立ち去った。精密検査の結果、2ヶ所で腰椎骨折が認められ、当夜には大会からのリタイヤが発表された。「もしかしたら僕にとって最後のツール・ド・フランス」と、前日に何度も繰り返していた34歳は、ひどく残念な形でツールにサヨナラを告げることとなった。マイヨ・ジョーヌ着用日数も、29日で打ち止めとなるのだろうか……。
前方はさらにスピードを増していった。今年4月からユイ直前に組み込まれた4級シュラヴ坂は、肝心のフレッシュ・ワロンヌでは大した役目を果たさなかったが、ツールでは集団を大きく絞り込んだ。ユイの細道へと向かっては、毎年4月に延々と繰り返されてきているように、集団内では非情なるポジション争いが繰り返された。
ここではやはり、過去6大会中で優勝2回・2位2回を誇るカチューシャが、一枚上手なところを見せ付けた。ジャンパオロ・カルーゾが最前列で最大勾配26%の「チャペルの道」へと飛び込むと、プリトを背負って猛スピードで壁をよじ登り始めた。もちろん春のユイ登坂を12年間欠かさず行ってきたロドリゲスは、誰よりも―今年5年ぶり4回目のフレッシュに参戦したフルームや、時々しか走りに来ないコンタドール―、壁の攻略法を熟知していた。
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