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「まだうまく実感できないよ。ツール・ド・フランスは、僕にとってずっと『夢』だった。まずは参加することを夢見て、それから、ブエルタで区間勝利した後、ツールでの区間勝利も夢見始めた。でも、こんな風に夢が実現するなんて……。今日はチームが僕を信じてくれた。僕に自由に走る権利を与えてくれた。それにしてもネルソン・マンデラ・デーに勝てたなんて、なんて素敵なんだろう」(カミングス、公式記者会見より)
2005年トラック世界選手権の団体追抜で世界チャンピオンに輝き、2004年アテネ五輪ではあのブラッドリー・ウィギンスと共に団体追抜銀メダルを獲得したカミングスの背後で、フランスの若い2人は戦いを終えた。「2位は何の意味もない」とピノは吐き捨て、「崩れ落ちてしまった」とバルデは肩を落とした。また4位リゴベルト・ウランに続いて、サガンがなんと5位でフィニッシュを果たした。バルデ、ピノと同じ1990年の怪童は、マイヨ・ヴェール用ポイントをさらに17pt上乗せして、グライペルとの差を61ptに開いた。
後方のもう1つのレースも、マンドの坂道で大きく動いた。ナイロ・キンタナが真っ先に切れ味鋭いアタックを繰り出した。ヴィンチェンツォ・ニーバリも共鳴した。リッチー・ポートに丸々1日休暇を出し、チームメートたちには山の麓まで引くように指示していたクリス・フルームは、ほんの少し出遅れるも、じわじわと、確実にキンタナに追いついた。一方でティージェイ・ヴァンガーデレンは脱落し、続いてニーバリも下がっていった。さらにキンタナとフルームが一緒に飛び去っていく背中を、アレハンドロ・バルベルデやアルベルト・コンタドールは遠くからただ眺めるしかなかった。
「調子が良かったから、自分の脚を試したかった。ライバル達がどんな動きをするのかも見たかった。そして、僕らの夢である、マイヨ・ジョーヌ獲得は不可能ではないのだ、ということを理解した。アルプスでは、フルームは我々に注意せねばならないよ」(キンタナ、ミックスゾーンインタビューより)
そんなことフルームはとっくに承知している。だからこそフィニッシュでは無我夢中でスプリントを切って、ハンドルを投げてまで、キンタナから1秒をもぎ取ったのだ。「1秒でも取れるものは取っておかないとね」(ミックスゾーンインタビューより)というように。つまりキンタナはマイヨ・ジョーヌ相手に1秒を失ったが、総合では2位(3分10秒差)に格上げとなった。40秒失ったヴァンガーデレンは総合3位(3分32秒差)に一歩後退。また総合4位バルベルデ(4分02秒)、5位コンタドール(4分23秒)と続く。
マイヨ・ジョーヌ記者会見にやってきたフルームは、質疑応答の前に、自らマイクを持って語り始めた。カミングスへの祝福、チームメートへのねぎらいと感謝、キンタナのアタックに応えられたことへの満足感、他のライバルたちからタイムを奪えたことの喜び……を語った後に、衝撃的な報告が行われた。
「ひどく残念なことに、50〜60km地点で、観客が小さなコップに入った尿を2杯、僕に浴びせかけてきた。『ドーピング野郎!』と叫びながら。ひどく失望させられた。受け入れられない事態だ。もちろん、こんな行為を働くのが、ごくごく一部の人間であることは分かっている。これも一部のメディアが、非常に無責任な情報を垂れ流ししているせいなんだ。3日前の僕の勝利や、チームについて、無責任な内容の記事が書かれている。これもまた、受け入れられない事実だ」(フルーム、公式記者会見より)
穏やかに、しかし毅然とした態度でフルームは語り続けた。かつてのランス・アームストロングのような挑発的なセリフを吐くわけでもなく、2012年のブラッドリー・ウィギンスが「ファッ×ン」と吐き捨てて記者会見場を後にしたような無謀さもなく、丁寧に、口元に笑みさえたたえながら、マイヨ・ジョーヌは「プロスポーツ選手としてリスペクトして欲しい」と訴えた。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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