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「今年だけでも何度もグランドンを上ったし、当然、下りのことも知り尽くしていた。本当は山の入り口でアタックしたかったんだけど……僕の脚の調子がすごく良いことを、あまり早い段階で周りに悟られたくなかったんだ。それに、今日の僕なら山頂付近で差をつけられる、って分かっていた。できる限り山頂までに人数を絞って、下りを上手く攻略すれば、そのまま勝利をさらい取れると確信していた」(バルデ、公式記者会見より)
下りで40秒近いタイム差を稼いだバルデは、垂直の崖に彫られたモンヴェルニエのヘアピンカーブも極めて冷静沈着にこなした。復活してきたフグルサングやローランたちが、後方で激しく追走を仕掛けていたけれど、リードはほとんど小さくならなかった。そして、経済学と法学の両方を修めているインテリ・バルデは、計算通りに、十分に余裕を持って、初めてのツール・ド・フランス区間勝利を手に入れた。
「僕は幸せな男だよ。うん。まだ現実味がわかないや。このツール・ド・フランスは、僕にとって、色々と難しかった。開幕時からずっと、僕の周りに、期待のようなものが渦巻いていた。もしかしたら、僕の本当のレベル以上のものを、期待されていたように思う。だから精神的に強くなきゃならなかった。幸いにもチームは常に僕を支えてくれた。でも昨日は、あわやすべてを投げ出すところだった。だから自分に言い聞かせたんだ。『がんばれ、諦めるな。この先何が起こるかわからないじゃないか』って。そしたら今日は、とてつもなく調子が良くて」(バルデ、公式記者会見より)
大胆さは報われた。バルデは総合でも10位にジャンプアップした。さらには山岳賞争いさえも、どうにか念願の首位に立った「プリト」と、同ポイント(68pt)の2位に昇格してしまった!アルプスの残り2日も厳しい戦いになりそうだなぁ……と、困ったようにバルデは笑った。
グランドンの難しい上りでは、マイヨ・ジョーヌ集団の周りも少しだけ騒がしくなった。真っ先に仕掛けたのは、バルデより1つ年下の23歳、ワレン・バルギル。昨ステージ終了時点で総合10位のアタックに、昨夜の大逃げで総合8位に上昇したばかりのマティアス・フランクと、6位ロベルト・ヘーシンクも合流した。
そこから、さらに、2kmほど上った地点だった。総合5位のコンタドールが、飛び出した。前日の下りで落車し、2分以上失った32歳の大チャンピオンが、捨て身のアタックを試みた。歯を食いしばり、山道を突き進み、コンタドールはすぐにバルギル集団へと追いついた。
「何かトライしたかったし、何が起こるのかを見たかった」(コンタドール、チーム公式リリースより)
マイヨ・ジョーヌは動かなかった。クリス・フルームが唯一監視していた総合2位ナイロ・キンタナと総合3位アレハンドロ・バルベルデも、一瞬顔を見合わせたが、アクションには移さなかった。さらに数キロ上った先で、総合7位ヴィンチェンツォ・ニーバリが加速を試みても、上記3人は動く気配を見せなかった。
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