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ニーバリはクロワ・ド・フェールで3度加速する。1度目の加速で、メイン集団を絞り込んだ。2度目の加速で、逃げ集団を捕らえた(つまりバルデがマイヨ・ジョーヌ集団に回収される)。カンゲルトに前を引かせ(ロドリゲス脱落)、次なる加速へ向けて準備をした。そして遺恨を残すことになる3度目……。
ちなみに、2度目と3度目の合間には、バルベルデもちょっとしたアタックを試みている。このときはスカイのワウテル・ポエルスが牽引を行い、たった1人でフルームを引っ張りあげた。すなわち前日の段階で総合4位のゲラント・トーマスも、山岳巧者のリッチー・ポートも、もはや前線には姿がなかった。ところが、アシストのいないマイヨ・ジョーヌを、総合2位と3位を擁するモヴィスターも、他のチームも、この場ではこれ以上は攻撃しなかった。
ゴールまで約60km。フルームにトラブルが発生する。フレームと後輪の間にアスファルトの破片が挟まった程度の、軽いアクシデントだった。ただ、まさにマイヨ・ジョーヌが立ち止まっている数秒の間に……、「アクシデント中のリーダージャージを攻撃してはならぬ」というプロトン内の紳士協定を無視して、ニーバリが3度目の加速をかけた!
「トラブルのことは、あとから無線で知らされた。加速時に後ろを振り返ったのは、単にカンゲルトに声をかけるため。僕はすでにアタックの体制に入っていたし、自分のレースを戦っただけ。それに僕だってジロで落車中にアタックされたことがあるし、コンタドールとアンディ・シュレクの事件だって有名だよね。別にルールで決まっているわけじゃないから」(ニーバリ、公式記者会見より)
後に表彰台裏でフルームから「アンチスポーツマンシップ」と糾弾されることになるのだけれど、そのままニーバリは毅然と突き進み、メイン集団から遠ざかっていった。山頂を越えたところでローランに合流すると、一緒に山道を駆け下り、ゴール前17kmまで行動を共にした。
「最終峠ラ・トゥッスイールの入り口で、ニーバリが加速した。もはや僕にはついていけなかった。だって彼ほどのチャンピオンが、『行く』と決めたんだもん……。3大ツールすべてを制してきたニーバリに負かされたことは、屈辱でも恥でもないさ」(ローラン、ミックスゾーンインタビューより)
フランス産ヒルクライマーを突き放したニーバリは、そのまま独走で歓喜の区間勝利をつかみとった。何度も拳を握り締め、腕を振り上げ、「ファンタスティック・フォー」のメンバーはやはりファンタスティックであったことを改めて世界中に知らしめた。
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