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ディフェンディングチャンピオンは、敗者としてツールを立ち去るつもりなどなかった。ゴールまで60km。少々議論を巻き起こすようなやり方で単独アタックを打つと、山頂フィニッシュをさらい取った。総合争いでも3人をごぼう抜きにして、4位へ上昇した。連日揺さぶりをかけてきたナイロ・キンタナは、ついにクリス・フルームを山道で突き放した。タイムは少し縮まったが、それでもマイヨ・ジョーヌの座を脅かすことはなかった。
「区間優勝を狙うためであり、総合順位アップのためでもあり、そして、自らの誇りを取り戻すためでもあった。うん、その全てだ」(ニーバリ、公式記者会見より)
プロトン全体に、ありとあらゆる野望が渦巻いていた。区間、マイヨ・ジョーヌ、総合表彰台、総合トップ10、山岳賞……。だからこそ138kmの短距離ステージは、まるでスプリントのように始まった。なにしろスタート直後の、ツール初登場1級ショシー峠への上りで、ヴィンチェンツォ・ニーバリやアルベルト・コンタドール、さらにはアレハンドロ・バルベルデさえ飛び出したのだ!メイン集団のスピードはうなるように上がった。あっという間にグルペットが出来上がり、マイヨ・ジョーヌを守るスカイ軍団さえ、散り散りになった。
一旦すべての逃げが回収されると、谷間で新しい逃げ集団が生まれる。そして2つ目の上り、超級クロワ・ド・フェールで、再び戦いに火がついた。
19人が潜り込んだエスケープには、すでに1度目の逃げに乗った選手の姿もあった。たとえば山岳ジャージ姿のホアキン・ロドリゲス、前ステージ覇者ロメン・バルデ、そして前日2位のピエール・ローラン。しかし3人の運命は、22.4kmという果てしなく長い山道の途中で、大きく分かれることになる。ローランはアタックを選んだ。3年前にラ・トゥッスイールを制した際、フレンチヒルクライマーは最終10kmから独走態勢に入った。今年は、上りゴールまで67kmを残して早くも1人になった。
1つ目の1級峠を先頭通過したロドリゲスは、いつしかちぎれていく。一方で、前ステージを終えた段階で「プリト」と山岳ポイントが同点だったバルデは、マイヨ・ジョーヌ集団に再合流し、ステージ最後まで前線に留まることになる。2人のその後を左右した原因は、ニーバリだった。
「今日の僕らは素晴らしいチームワークを発揮した。いずれの逃げにも、1人ずつ選手を送り込んだ。1つ目がスカルポーニて、2つ目がタネル・カンゲルトだ。クロワ・ド・フェールではリズムがすごく上がっていた。だから思ったんだ。総合順位を上げるために何かできるかもしれない、って。それに、もしかしたら、区間勝利も。とにかく、遠くから飛び立つのが、最高の解決策だった」(ニーバリ、公式記者会見より)
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