人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2015年8月30日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2015】第8ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line

「ゴールスプリントに持ち込むために全力で引いたんだけど、気がついたらデゲンコルブはいなくなっていた。ちょっと速すぎたのかもしれない。でも、どこで脱落したのかも、どこに行ってしまったのかも、まるで分からないんだ。無意味な仕事をしてしまった」(デュムラン、ゴール後インタビューより)

ちなみに、またしても下り第1カーブで、アタック組のホセホアキン・ロハスが落車した。ムルシアの地元っ子で、道は隅々まで知り尽くしていたはずなのに……。こんな同胞に代わって、同じくこの地方出身のルイスレオン・サンチェスや、やはりムルシア出身のアレハンドロ・バルベルデが、曲がりくねった細道を利用して、猛烈なダウンヒルアタックを展開した。

しかし、あらゆるアタックは、すべて中和された。総合5位バルベルデには、孤軍奮闘のチャベスがきっちり張り付いた。2度目の上りで飛び出し、下りでさらに差をつけた3選手のことは、最後の平地に入ってからペーター・サガン自らが追走を仕掛けた。スピードは恐ろしいほど上がり、プロトンはまるで蛇のように左右にうねった。

「ロット・ソウダルの選手と一緒に、ギャップを詰めようとアタックを仕掛けた。集団が後ろから追いついてきたから、僕は一旦腰を下ろした。また別のロット・ソウダルの選手が前方を引き始めた。10mほど先に行ってしまった彼に追い付くために、再びアタックを打った。追いついた後、彼にそのまま進むよう声をかけて、僕は後輪に入り込んだ。そして左方向に動いた時だった。オートバイが僕をはねたんだ」(サガン、チーム公式リリースより)

区間勝利を争うチャンスも、ポイント賞ジャージを取り戻す機会も、すべてが一瞬にして奪われた。ゴール前8.2km地点で怒号をまき散らすサガンを残して、メイン集団はフィニッシュへと突き進んでいった。代わって前に出てきたトレックと、なぜか相変わらずティンコフが引き続ける集団に、逃げの3人は残り3.5kmで吸収された。サガンと一緒に追走を仕掛けたロット・ソウダルから、アダム・ハンセンがカウンターアタックを試みるも、トレックが責任を持って回収へと走った。そしてラストストレートで、ストゥイヴェンが解き放たれた。

「向かい風は吹いていないと分かっていたから、全力でペダルを踏んだ。ラスト350mで飛び出した。カハルラルの選手(ペイオ・ビルバオ)が少し押してきたけれど、すぐに、僕のほうがパワーがあると悟った。だからひたすらアグレッシブに……、激昂しながら、自らを奮い立てながら、そして『自分には出来る』と自分に言い聞かせながら、突進し続けた。素晴らしい勝利だ」(ストゥイヴェン、チーム公式HPより)

2009年に世界選手権ジュニア部門でアルカンシェルを手に入れたストゥイヴェンは、2010年には、あのサガンが2位にしか入れなかったパリ〜ルーベジュニアを制している。当然ベルギー自転車界から「ボーネンの後継者」と大いに期待されてきた23歳は、人生2度目のグランツールで、見事な初勝利を手に入れた。

「ずっと高いところを目指してきた。高みを目指すことは、時に、失望しか得られないこともある。今年はあまりに不運続きだったから、ようやく結果を出すことができて最高だね。それに初めてのワールドツアー勝利を手にして、本当に素敵だ。すごく、すごく嬉しい」(ストゥイヴェン、チーム公式HPより)

オートバイにはね飛ばされるというショッキングな事故にも関わらず、サガンは無事にフィニッシュラインへとたどり着いた。オーガナイザーのオートバイ「183番」の運転手は大会追放を言い渡され、またサガン自身も侮辱や脅迫に値する発言をしたとして200スイスフラン、さらには自転車競技のイメージを損なう行為があったとして100スイスフランの罰金を課された。所属チームのティンコフ・サクソは、公式リリースにて、落車を引き起こした責任者に対して法的な対応も辞さない構えであることを発表した。またリリースによれば、サガンは左臀部から左足下部にかけて、すり傷と、1度、ないし2度の火傷を負っているとのこと。また左前腕に筋肉内血腫を伴う挫傷も負っている。

「ペーター・サガンがブエルタ・ア・エスパーニャを続けるか否かの決定は、日曜日の朝に下されるだろう」(ティンコフ・サクソ公式リリースより)

もしも続行を決意した場合、勾配19%の激坂を、満身創痍でよじ登らねばならないことになる。集団落車に巻き込まれた選手や、TVの映らないところで下り落車した無数の選手たちにとっても、ひどく厳しい第9ステージが待ち受けている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ