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見ている方でさえ思わず歯を食いしばるような激勾配で、カウンターアタックの応酬が繰り広げられた。ツール・ド・フランス覇者クリス・フルームと、激坂ハンターのホアキン・ロドリゲスを振り払って、トム・デュムランが区間と総合のダブル獲得を成し遂げた。マイヨ・ロホを長らく守ってきたエステバン・チャベスは総合3位に後退し、区間3位の「プリト」が総合2位に浮上した。2日前はハンガーノックに苦しんだフルームも、総合トップ10圏内に返り咲いた。
前日の傷跡は深かった。開催委員のオートバイに跳ね飛ばされ、左半身を痛めたペーター・サガンは、この朝に大会を離れた。前ステージ覇者のジャスパー・ストゥイヴェンも、実はラスト50km地点の集団落車で左舟状骨を折っていたことが判明し、リタイアを決めた。今ステージの35km地点でも、大きな集団落車が襲いかかった。アレハンドロ・バルベルデ、ファビオ・アル、ドメニコ・ポッツォヴィーボ、サムエル・サンチェス……等々が地面に崩れ落ちた。幸いにも、各チームの総合リーダー級が、この日の戦いを放棄することはなかった。
スタート直後に、14選手の逃げが出来上がった。山岳ジャージ姿のオマール・フライレが、終盤の2級峠を先頭通過しようと奮闘した。前線に3人送り込んだエティクス・クイックステップは、逃げ切りをかけて交互にアタックを仕掛けた。またツールではフルームの名アシストとして、さらには第18ステージまで自らも総合4位と好走を続けてきたゲラント・トーマスの存在が、逃げ集団内で危険な香りを漂わせていた。
ただし、この日2回通過するプッチュ・リョレンサ峠は、とびきりの激坂として知られていた。しかも勾配表には最大19%と記されていたが、本当のところは、ラスト500mのヘアピンカーブ部分は勾配26%にまで達するのだ!つまり現役プロトンではピカイチの激坂巧者であるロドリゲスが、この山に狙いをつけないはずはなかった。だからチームメートを総動員して、追走作業に勤しんだ。最終盤にはマイヨ・ロホ擁するオリカ・グリーンエッジや、アルを好位置で発射したいアスタナの協力も得られた。おかげでラスト4km、壁の麓で、無事に全てのエスケープを回収し終わった。
坂道で真っ先に主導権を奪いとったのは、しかし、モヴィスターだった。先のツールを総合3位で終えたバルベルデが一番に仕掛けた。ラファル・マイカやアル等々が必死で食らいつくと、代わってツール総合2位のナイロ・キンタナが飛び出した。ライバル勢がたっぷり努力して、どうにかコロンビアのヒルクライマーへと追いつくと、またしてもバルベルデがひらりと上方へと躍り出た。
まるで、7月のツールで見られたような、ダブルリーダーによる波状攻撃だった。しかもフランスでは、アルプスまで来てようやく実を結んだ2人の連携プレーだったが、この日は早くも7月の王者が遅れ始めて……。ところが、モヴィスターの積極性も、フルームの苦しみも、今ステージに限っては単に一時的なものでしかなかった。
「言い訳をするのは好きじゃないけれど、落車の後、どんどん状態は悪くなっていった。途中棄権さえ考えた。肩がひどく痛かった。まるでナイフが刺さっているような痛みだった」(バルベルデ、チーム公式HPより)
「僕にとっては今大会で最も難しい上りフィニッシュのひとつだった。距離が短く、勾配がひどくキツイ。だから出来る限り自分の位置を守りに行くこと。それが僕にとって最も大切だった」(キンタナ、チーム公式HPより)
つまりモヴィスターコンビにとっては、言ってみれば苦し紛れのアタックだった。ゴール前3kmで、2人の猛攻は打ち止めになる。代わってデュムランが積極策に移行した。総合有力勢たちが少し息をついたゴール前2.7km、果敢に加速を仕掛けた。
「僕の作戦は、勾配の低い場所でアタックを仕掛けて、勾配のキツイ場所ではしがみつくことだった」(デュムラン、チーム公式リリースより)
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