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サイクル ロードレース コラム 2015年9月5日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2015】第13ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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ところがゴール前30km、下り坂でオリヴェイラが大きく加速すると、残りの23人は反応を止めてしまう。

「もしかしたら、僕の飛び出しは早すぎたかもしれない。ただ、あの時間帯はちょうど、逃げのメンバーたちが、エネルギー回復に努めていた。それに、もしも勝ちたければ、先制攻撃をしかけなきゃならないことは分かってた。だからアタックすることに決めたんだ」(オリヴェイラ、チーム公式リリースより)

年少、ジュニア、ユース、エリートのあらゆる部門でポルトガル個人タイムトライアルチャンピオンに輝き、U23時代には世界選手権の個人タイムトライアルでも銀メダル獲得している26歳にとっては、願ってもない状況だったに違いない。1人になったことで、思う存分、自分の走りを披露することができたのだから。

「フィニッシュラインまでのタイムトライアルだった。頭を低くして、タイムトライアルのつもりで、一定リズムでペダルを回した。僕はちょっとしたTTスペシャリストだし、特に向かい風が吹いていたから、パワーのある僕には有利だった」(オリヴェイラ、ゴール後TVインタビューより)

真剣な追走が始まったのは、そこから、ようやく9kmほど進んだ後だった。すでにオリヴェイラと残り逃げ集団との差は、25秒ほどにまで開いていた。しかも、誰かが追走アタックを仕掛けるたびに、誰かが加速を試みるたびに、グループに居残ったランプレの2人が動きを阻止した。背中にぴったりと張り付き、ライバルたちの意欲をとことん削った。「完璧なチームワークだった」(ゴール後インタビューより)と、シャヴァネルが賞賛したほどに。

そのままオリヴェイラはスピードを落とすことなく、ゴールまで一番で駆け抜けた。国内選手権でばかり勝利を手に入れてきたポルトガル人は、2010年のプロ入り後初めて、「国際大会」で、しかも「グランツール」での栄光を勝ち取った。またジロ・デ・イタリア区間4勝、ツール・ド・フランス区間1勝を挙げてきたランプレは、2015年3大ツール全てで区間勝利をもぎ取ったことになる。

「キャリアで最も美しい勝利だよ。国内選手権の勝利は感動的なモノだけれど、今日の気持ちは、上手く言い表すことはできない。チームと喜びを分け合えることが嬉しい」(オリヴェイラ、チーム公式リリースより)

「もはや追いつけない」と察知した集団内で、最も奮闘した選手は、間違いなく新城幸也だった。新城はシカールのために、またニキ・テルプストラはブランビッラのために、スピードを維持し続けた。後続メイン集団とのタイム差を出来る限り広げるために、代わる代わる集団牽引に尽くした。特に新城はラスト500mまで、あらん限りのエネルギーを振り絞った。他の選手たちが区間2位争いのスプリントに打って出る一方で、新城は静かに仕事を済ませると、22人から11秒遅れで1日を終えた。

「誰も追わずにこのまま区間2位争いをするのなら、せっかくここまで逃げて後続集団とのタイム差を開いてきたので、それが無駄にならないように、前の1名を追うより、後続とのタイム差を過ごしでも開いて、ロメンの総合を上げようと判断した。結果的に自分はゴールスプリントに絡まなかったが、ロメンの総合がトップ10まで上がったので、この判断はチームも評価してくれている」(新城幸也、Teamユキヤ通信より)

「最後には幸いにも、僕には、ユキヤ・アラシロという頼れるチームメートがいた!」(シカール、ゴール後インタビューより)

メイン集団は、オリヴェイラから4分48秒遅れ、残り集団から3分48秒遅れで静かにフィニシュラインを越えた。総合1位から8位までに変動はなく、ブランビッラが総合9位(2分51秒差)、シカールが10位(2分51秒差)に浮上した。前日まで9位につけていたキンタナは、首位アルとのタイム差は変わらないものの(3分07秒差)、総合11位へと押し出された。

もちろん、コロンビアの山岳巧者が、7月のツール・ド・フランスではアルプス最終2日間で、クリス・フルームとの3分10秒差を1分12秒差にまで縮めたことを忘れてはならない。今ブエルタはいまだ8ステージ残っている。しかも翌第14ステージからは、3日連続の難関山頂フィニッシュが待っている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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