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逃げ切りが決まる。そう予測されていた。確かにニコラス・ロッシュは、逃げ切り勝利をもぎ取った。ただし、マイヨ・ロホ集団とはわずか38秒差の、ぎりぎりの逃げ切りだった。後方では3秒差を巡って、厳しいバトルが繰り広げられた。総合2位ファビオ・アルが何度も攻め立て、マイヨ・ロホのトム・デュムランも1度だけジャブを打った。その他の総合上位勢も、それぞれに攻撃を繰り出した。熱かった1日は、大いなる引き分けで終わった。デュムランとアルのタイム差は3秒のまま。総合上位12人の順位やタイムもまた、一切の変動はなかった。
マドリード到着前の、逃げチャンスは、残り3回。うち1回は1級峠×4の難関山岳ステージだから、つまり、大部分の選手にとっては18・19の両ステージが最後の機会となる。この日は5選手がスタートラインに並ばず、さらに小さくなった162人の集団は、いつにも増して猛スピードで走り出した。時速50kmもの超高速で、アタック合戦は延々1時間続いた。前日に続き鼻血に悩まされた新城幸也は、チームカー隊列に下がり、軽い治療を受けているうちに、飛び出しの波に乗り遅れた。そして50km地点を過ぎた頃、25人のエスケープ集団が出来上がった。
「40人が逃げたとき(第10ステージ)も、僕らジャイアント・アルペシンはしっかりコントロールできたからね。だから、逃げ集団の制御に関しては、まったく心配していない」(デュムラン、スタート前インタビューより)
むしろ、逃げ集団が最後まで行ってくれたほうが、マイヨ・ロホには都合が良かった。だって中間ポイント(最大3秒)&フィニッシュ地点(最大10秒)で発生するボーナスタイムを、ライバルに取られる心配がなくなるから。だから、ただ淡々と、ジャイアント隊列はテンポを刻んだ。最大6分半ほどの余裕を与えた。エスケープ内の総合最上位が13分38秒遅れのバルト・デクレルクだったから、デュムランの立場が揺らぐ恐れもなかった。
ところが、レースの主導権は、ドイツチームの手中にずっと収まっていたわけではない。まずはMTNクベカが静かに前方へ割り込んだ。例のデクレルクの存在が、癇に障った。なにしろ総合10位ルイ・メインティスと、このベルギー人との総合タイム差は、6分37秒でしかなかったから。「グランツール総合10位」の地位を守るため、南アフリカチームはペースを速めた。
力ずくで集団先頭に詰め掛けたのは、アスタナだった。ゴールまで55kmに近づくと、チーム7人全員で隊列を組み上げ、速いリズムを刻みだした。逃げ集団とのタイム差は、いまだ5分残っていた。
アスタナの締め付けは、ラスト35kmで、一気に厳しくなる。理由は総合3位ホアキン・ロドリゲスが、「フエンテ・デ」的なアタックをしかけたから。すぐに謀反は鎮められた。しかし、これをきっかけに、水色列車は今まで以上のスピードを強いた。前方とのタイム差も急速に縮まっていった。
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