人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サイクル ロードレース コラム 2015年9月14日

【ブエルタ・ア・エスパーニャ2015】第21ステージレースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
  • Line

夕暮れ時がやってくると、メイン集団のスピードはぐんぐん上がっていった。トレックファクトリーレーシングは大会4勝目を狙って、貪欲に列車を組んだ。BMCやランプレ・メリダ、オリカ・グリーンエッジも前方へ競り上がった。なにより、ジャイアント・アルペシンの面々が、前夜の苦い思い出を吹き飛ばすべく、追走作業に精を出した。悲しきマイヨ・ロホ喪失劇の主役トム・デュムランさえも、プロトン最前線に駆け上がると、パーフェクトな牽引を披露した。シベレス広場に最終1周を告げるジャンの音が鳴り響き、集団はひとつになった。

T字の周回コース……つまり3つのヘアピンコーナーと、2つの約90度カーブを含むテクニカルなコースを、ブエルタ一行はとてつもないスピードで走り続けた。ジャイアント隊列は、最後のヘアピンコーナーに先頭で突っ込んだ。発射台2人が先頭を爆走し、完璧なポジションで、デゲンコルブを最終ストレートへと導いた。そして、少々早すぎるほどのタイミングで、リーダーは解き放たれた。待ちすぎたせいで、ことごとく行方を塞がれてしまった過去の失敗を、繰り返さぬように。

「ついに!この勝利を手につかむことができて、本当にうれしい。このために、僕らは21ステージも待たされたんだから」(デゲンコルブ、チーム公式リリースより)

2012年大会は5勝、2014年は4勝をたたき出した。今年も区間勝利を量産すべく、チームリーダーとしてスペイン一周へ乗り込んできた。しかし2015年大会、ここまでのスプリントチャンス5回で手に入ったのは、区間2位が2回、3位が1回……。その代わり、デュムランのマイヨ・ロホを守るため、アシスト役として汗を流してきた。第19ステージの石畳ファイナルでは、パリ〜ルーべ覇者として、完璧なるリードアウト役を務めたことも。

「昨日は僕らにとって暗黒の1日だった。みんな大いに失望した。でも、これがスポーツ、これが人生なのさ。僕らはトムを誇りに思う。チームにとっては過去一番成功したグランツールになったし、自分たちが成し遂げてきたことを誇らしく感じる。大会を最高のやり方で締めくくることができたし、チームのみんなが、この勝利に値するんだ。おかげでポジティヴな気持ちで、家に帰ることができる」(デゲンコルブ、チーム公式リリースより)

第20ステージ前夜に腹痛と下痢に苦しんだデュムランは、6秒差で身にまとっていたマイヨ・ロホを失ったどころか、表彰台からさえ滑り落ちた。初めての、というよりも「予定外の」グランツール総合争いは、6位で幕を閉じた。小さな慰めとして、大会全体を通しての総合敢闘賞に指名された。今年のブエルタを大いに盛り上げた立役者として、マドリードの表彰式に参加することが許された。

5月のミラノに続いて、今年2回目のグランツール総合表彰台に臨んだのは、ファビオ・アルだった。ジロではあくまでも2番手の位置だったけれど、今回はホアキン・ロドリゲスとラファル・マイカを左右に従えて、最も美しい栄光に酔いしれた。顔いっぱいに笑顔が広がった。

「美しいブエルタでした。ブエルタは大好きなレースです。しかも、観客の皆さんのおかげで、この大会はさらに美しいものとなっているのです。本当に感謝します。チームのみんなに、アスタナのすべてのチーム関係者に、この勝利を捧げます。この勝利は彼らのものです。それからプリトに、賞賛の言葉を送ります。ファンタスティックなバトルを繰り広げてくれましたし、素晴らしい区間勝利も手にしています。自らが偉大なるチャンピオンであることを、またしても証明してくれました。それから、ラファにも。世界屈指の強豪が並んだこのブエルタで、この地位に相応しい、素晴らしい走りを見せてくれました。とにかく、この場にいる皆様に、ありがとうの気持ちでいっぱいです。それでは、また、次回に」(アル、優勝演説より)

それにしても、サルデーニャ生まれのヒルクライマーは、どうやら5歳年上のシチリア産オールラウンダーと同様の一歩を踏み出したようだ。ヴィンチェンツォ・ニーバリもまた、初めてのグランツール制覇は、25歳で戦ったブエルタだった。残念ながら、区間勝利がないのも一緒だったけれど(エセキエル・モスケラの失格により、ニーバリは後年ステージ勝利を与えられている)。

2015年のグランツールの戦いは、夜の闇の中で、煌びやかに幕を閉じた。秋の訪れと共に、自転車シーズンの終わりも、ゆっくりと近づいている。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サイクル ロードレースを応援しよう!

サイクル ロードレースの放送・配信ページへ