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サイクル ロードレース コラム 2016年4月7日

【パリ〜ルーベ/プレビュー】通算52.8kmの凸凹道は「北の地獄」。2016年石畳対戦、最終章。

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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スタート地コンピエーニュから、伝統的フィニッシュ地のルーベ自転車競技場まで駆け抜けるレースで、石畳が登場するのは98.5km地点から。つまりスタート後2時間ほどは、プロトンはアスファルトの道を走る。テレビ中継も、例年ならば石畳に入ってから開始してきた。2016年大会は史上初めて、スタートからフィニッシュまでTV生中継が敢行される。地獄の接近と共に、プロトン内に緊張感が増していく……、そんな様子をきっと我々は目にすることだろう。

それにしても、ファビアン・カンチェッラーラvsトム・ボーネンの最終バトルを、我々は目撃することはできるのだろうか。2005年から2014年にかけての10年間で、現在35歳の2人は、実に7つのタイトルを分けあってきた。ボーネンが史上最多タイの4つ、カンチェが3つ。2008年のトムクは、自転車競技場内のスプリントでスイス人を振り払った。2010年のスパルタクスは、フィニッシュまで50km地点の、まるで「ワープ」のような加速でフランドルの星を引き離した。カンチェッラーラが今季限りの引退を宣言しているから、両者の石畳対決は、泣いても笑ってもこのルーベが最後となるはずだ。

しかし今シーズンのボーネンには、もはや往年の輝きが見られない。平坦の石畳ならまだまだ行ける、なんてチームマネージャーのパトリック・ルフェヴェルは期待を抱き続けるが、そもそも所属チームのエティックス・クイックステップ自体が今季のクラシックは空振り続き。あいかわらず前線に大量の選手を送り込み、レースを積極的に作ろうと努力はしているけれど。一方のカンチェはE3ハーレルベーク4位、ヘント〜ウェヴェルヘム4位、ツール・デ・フランドル2位と、ここまでの石畳クラシック全てで勝負にきっちり絡んでいる。ロンドでは完成させられなかった「理想的なシナリオ」を、ルーベで書き上げる準備はできている。

だからむしろ、カンチェッラーラがキャリアの最後に制さねばならないのは、26歳ペテル・サガンとの新旧世代対決のほうだ。昨秋ついにアルカンシェルに袖を通したサガンは、2週前のヘント〜ウェヴェルヘムを勝ち取り、前週のフランドルでは待望のモニュメント1勝目を手に入れたばかり。つまり現役世界チャンピオンとしてフランドルを勝った史上5人目の選手となった。もしも今年のルーベも優勝することができれば、1962年のリック・ヴァンローイ以来史上2人目の、「世界チャンピオンジャージ姿でヘントとフランドルとルーベの同一年制覇」を達成することになる!

世界チャンピオン、と言えば、元世界王者のマーク・カヴェンディッシュが人生2度目のルーベに挑戦する。元シクロクロス世界チャンピオンのズデネック・シュティバルやラルス・ボームも優勝候補として名前が上げられるし、元個人追抜世界チャンピオンのテイラー・フィニーは、ケガから復帰し、2年ぶりに大好きなルーベに帰ってくる。

もちろん昨フランドル覇者アレクサンドル・クリストフ、フランドル5位で確かな手応えを感じたというルーク・ロウ、ハーレルベーク8位⇒ヘント2位⇒フランドル3位と相変わらず勝ちきれないセップ・ヴァンマルク等々の有力スペシャリストたちからも目を離すことは出来ない。地元ベルギーの期待を背負って立つエティックス・クイックステップ軍団(ボーネン、シュティバル、ニキ・テルプストラ、スティーン・ヴァンデンベルフ、トニー・マルティン、マッテーオ・トレンティン)は、クラシックスペシャリスト精鋭軍としての誇りを取り戻すために、これまで以上に入念な作を練ってくることだろう。

地獄を真っ先に抜けだした選手には、天国への扉が開かれている。たくさんのファンが詰めかけたルーベ自転車競技場で、歓喜のウィニングランを済ませたら、勝者は本物の石畳で作られたトロフィーを天へ高らかに突き上げる。そして、これを合図に、春クラシックの舞台は石畳から丘陵地帯へと移動するのだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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