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サイクル ロードレース コラム 2016年4月19日

【アムステルゴールドレース/レビュー】 途中棄権者続出のシビアなレース。ガスパロットが、チーム初のワールドツアー優勝

サイクルNEWS by 寺尾 真紀
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冷たい雨が吹きつける中、スカイの先導でメイン集団はクルイスベルグを越える。先頭の逃げ集団ではアレックス・ハウズ(キャノンデール)のアタックが中和される一方で、遅れをとった選手たちが千切れて後方へと取り残されていく。平均勾配8.1%のアイセルボスウェグ、続くフロムベルグでもセプ・ファンマルケ(ロットNL・ユンボ)、ベルギー国内ロード王者のプレーベン・ヴァンヘッケ(トップスポートフラーンデレン・バロワーズ)らのアタックが続くが、集団も目を光らせており、抜け出せる選手はいない。ダリル・インピー(オリカ・グリーンエッジ)が先頭に立ち、逃げグループと追走集団(の残り)を追う。メイン集団は長く長く引き伸ばされ、いくつもの短い鎖に分かれ、後方の選手はそのまま取り残されていく。

3回目のカウベルグを前に登場する、ケウテンブルグ。最大勾配22%、今大会に限らず、オランダでもっとも傾斜がきついとされる。この上りでインピーらが牽引する集団が追走グループを飲みこんだ。ここでヤン・バークランツ(Ag2r)、ファンマルケらが飛び出すが、これもほどなくして捕らえられた。

ケウテンベルグでのペースアップと、雹(ひょう)混じりの冷たい雨による消耗で、過去3大会で優勝を挙げているフィリップ・ジルベール(2010、2011、2014)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン、トム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)らの有力選手たちが、次々と集団から遅れ始める。

続く、3回目のカウベルグ(残り21.1km)では、メイン集団からボブ・ユンゲルス(エティックス・クイックステップ)とエンリコ・バッタリン(ロットNL・ユンボ)がアタックを試みる。オリカ・グリーンエッジのマシュー・ヘイマン(先週行われたパリ〜ルーベの勝者)、マイケル・アルバシーニ、ダリル・インピーが鬼気迫る表情で牽引してまず2人のアタッカーを捕らえる。ピーター・セリー(エティックス・クイックステップ)も集団の先頭に立ち、そのさらに数キロ先、残り14km地点で、最後まで逃げ続けていた5選手をようやく吸収。この動きの中、前年優勝者のミカル・クヴィアトコウスキー(チームスカイ)は集団の後方から脱落していく。

カウベルグの一つ手前のベメレルブルグ(この日最後から2番目の上り)を下りきったところ、ゴール前8km地点で、オリカ・グリーンエッジが先導する集団から、ロマン・クロイツィゲル(ティンコフ)がアタック。プロトンの一瞬の戸惑いをつき、みるみる距離を開いていく。アルバシーニ、ヘイマンらが差をつめきれずにいる中、今度はロット・ソウダルの赤いジャージ、ティム・ウェレンスが一人飛び出す。そのままクロイツィゲルを抜き去り、そのまま前へと進んでいく。手を手首のところで交差させてハンドルバーに沿わせたTTのスタイルで進むウェレンスと、追走のイニシアチブが決まらない集団との距離は開いていく。

集団ではセリーが先頭に立ち、アスタナ、ティンコフも加わるが、ウェレンスとのタイム差は20秒近くまで広がる。焦れた集団からアルバシーニが再び先頭に飛び出し、捨て身の追走を開始。これをエティックス・クイックステップ、Ag2rが引き継ぎ、レースは、最後の勝負どころ、カウベルグへ。

長い脚をコンパスのように伸ばし、カウベルグへの左ターンにとびこんでいったウェレンスから12秒遅れで、45名ほどの集団がカウベルグの足もとにたどりつく。集団前方にはファンマルケやバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)、ワレン・バルギル(ジャイアント・アルペシン)、イェーレ・ヴァネンデール(ロット・ソウダル)の姿が見える。右に、左に、ゆるやかにカーブするカウベルグの中腹で、集団前方から飛び出したガスパロットがウェレンスの背後に迫り、そのまま抜き去っていく。ガスパロットにはヤン・バークランツ(Ag2r・ラモンディアル)とミカエル・ヴァルグレン(ティンコフ)が続いていたが、ゴール2km前で、ガスパロットに追いすがることができたのはヴァルグレンのみ。背後のグループの前方では、バケランツ、マシューズ、セルジオ・エナオ(チームスカイ)らと顔を見合わせたあと、ヴァネンデールが意を決したように追走を開始する。

残り1.5kmで、それまで先行していたガスパロットの前にヴァルグレンが出た。ヴァネンデールを先頭に、後方に迫る集団を肩越しに振り返りながら、残り1kmを示すフラムルージュを越える。2人と、後方集団の間には、150mほどの差が残るのみ。生き物のように右に、左にとうねりながら、後方の集団は2人との差をつめようとする。

ヴァルグレンはガスパロットを後輪に従えたまま、必死に前へ進んでいく。400m・・・200m。残り200mでガスパロットが右へ飛び出し、渾身の力でペダルを踏み込む。ヴァルグレンも追うが、勝負は見えていた。両手の人差し指で天を差しながら、フィニッシュラインを最初に越えたのは、ガスパロットだった。

2人のすぐ後ろでも、必死のスプリントが始まった。30名ほどの集団の中では、バルディアーニCSFのソニー・コルブレッリがひとり抜きん出た。コルブレッリは、トップタイムに3秒遅れの3位で、表彰台を確定させた。

アムステルを2回以上制したのは、これまでに、エディ・メルクス、ヤン・ラース、そしてフィリップ・ジルベールの3人だけ。2012年に続く2勝目をあげたエンリコ・ガスパロットは、その4人目に名を連ねることになる。 また、ワンティ・グループゴベールにとっては、チームとして初のワールドツアー(WT)レース優勝となった。 なによりも、3月末に亡くなったチームメート、アントアーヌ・デモアティエの名を刻んだプレートを身につけてフランドルを戦い、アルデンヌに乗り込んできたチーム全員が待ち望んだ勝利だった。

急に降り始めた雨と急激な気温の低下もあり、過去の優勝者や前評判の高かった選手を含め、80人近くが途中棄権というかなりシビアなレースになった。今大会には3人の日本人選手が出場していたが、4回目の出場となった別府史之(トレック・セガフレード)、全日本チャンピオンの窪木一茂(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)、小石祐馬(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)のいずれもがDNFとなっている。

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