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サイクル ロードレース コラム 2016年4月26日

【リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ/レビュー】 雨のち晴れのちブリザード… めまぐるしく変わる天候に翻弄されたアルデンヌクラシック最終戦で、ポエルスがキャリア最大の勝利!

サイクルNEWS by 寺尾 真紀
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折からの寒波襲来の中で開催されたリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ第102回大会は、今年新設されたレース最後のカテゴリー山岳、コート・ドゥ・ラ・リュ・ナニオ(ナニオ通りの坂)でアタックしたワウテル・ポエルス(チームスカイ)が、ミハエル・アルバシーニ(オリカ・グリーンエッジ)とルイ・コスタ(ランプレ・メリダ)をアンスのゴール・スプリントで下し、チームスカイに初のモニュメント勝利をもたらした。

レースの展開

「リエージュは、大雪になるかもしれない」 アルデンヌ・ウィークがキックオフした先週日曜以降、イノーが伝説的な勝利をあげた1980年以来となる「ネージュ〜バストーニュ〜ネージュ」再来の可能性が、かなりの興奮と懸念をもって、レース関係者やメディアに取り上げられた。週末がすぐ目の前に迫った金曜の時点でも、降雪の確率は高いまま。緊張は否が応でも高まる。

日曜の朝。スタート地リエージュでは小雪がちらつき、まるでクールネ〜ブリュッセル〜クールネ(2月に行われるベルギーのワンデーレース)のような寒さ。しかし危惧されたドカ雪にはならず、ルート上で降雪があっても、道路に付着する雪や積雪はそれほど多くないと考えられたために、レースはそのまま開催されることになった。

UCIによるプロトコル導入により、極端な悪天候(気象条件)のもとでのルートの変更や短縮、レース中止のイニシアチブは主催者や連盟だけのものではなくなっているが、今回同プロトコルが発動されることはなかった。

ワセリンや温感クリームを体のすみずみまで塗り、サイクルウェアを厚く重ね着し、これから襲ってくるであろう寒さ冷たさに気持ちも身構えた選手たちが、サン・ランベール広場を走り出す。ルーベの石畳もフランドルの「ヒリンゲン」もハードだが、リエージュのハードさは、その道のりの最初から最後まで間断なく続くアップダウン。アルデンヌ・スペシャリスト、クライマー、GCライダー(グランツール総合上位を狙う選手)が一同に会す、華やかなレースでもある。

さて、リエージュの町を抜け、折り返しのバストーニュ(スタートから103.5km、ゴールから146.5km)に向かって南下を始めたプロトンから、まずアタックに成功したのはニコラ・エデ(コフィディス)だった。ここにパヴェル・ブラット(ティンコフ)、パオロ・ティラロンゴ(アスタナ)、トーマス・デヘント(ロット・ソウダル)、チェザーレ・ベネデッティ(ボーラ・アルゴン18)、アレッサンドロ・デマルキ(BMCレーシング)、ジェレミー・ロワ(FDJ)の6人がブリッジを成功させ、11km地点で、かなり強力な7人の逃げグループが成立する。このあと、フレーシュ・ワロンヌでも逃げに加わったベガールドステイク・ラエンゲン(IAMサイクリング)が25kmの追走を実らせ、最終的には8人がメイン集団に先行する形になった。

ラエンゲンが先頭グループを目指してひとり追走を続ける間、UCIコミッショナーと主催者のA.S.O.は早急な決断を迫られていた。雪雲が停滞して積雪がひどくなり、安全な走行をおびやかす区間ができたためだ。結局、KM45〜KM75区間でより南向きのルートに迂回することが決まり、レースの総走行距離は250kmに短縮された(ー約3km)。最初の上り(ラ・ロッシュ・アン・アルデンヌ)の手前で元のコースに復帰するため、カテゴリーのついた上りは10コのままで、変わりはない。

こうして急遽導入された迂回コースだったが特に大きな混乱はなく、元のコースに戻った選手たちは最初の上りをこなし、バストーニュの折り返し地点へたどりついた。

折り返し地点のロン・ポアン(ラウンドアバウト)で方向転換し、次のサン・ロッシュの上りに向かうメイン集団では、エティックス・クイックステップとモビスターが先頭に出て、少しずつ逃げグループにプレッシャーをかけはじめる。折り返し地点で9分近かったタイム差が、サン・ロッシュの頂き(残り128km)では8分弱に、さらに、ワンヌの頂上(残り84.5km)を通過するころには、4分ちょっとまで縮まった。

ここワンヌから、オート・ルヴェ、ロジェ、マキザールと上りが続いていく。サン・ロッシュのように短く急な(最大勾配11.2%)上りは登場しないが、長く上って短く下る、長く上って短く下る、の連続は、脚にじわじわと疲れをためていく。終盤、ルドゥット、ロッシュ・オ・フィーコンという関門が待つが、その前にも、これらの上りが確実に選手たちを消耗させていく。

レースが次第に厳しさを増す中で、天候は思いがけず好転し、少なくとも天候に関しては、プロトンに楽観的な雰囲気が漂い始めていた。頭上には青空が広がり、コース上の水たまりに陽射しがきらめいている。暑くなってきたのか、何人かがファスナーを開き、鳥のようにジャケットの裾をばたばたさせる。チームカーまで戻り、脱いだジャケットを手渡す選手もいる。マキシム・ブエ(エティックス・クイックステップ)はジャケットの袖から腕が抜けず、チームメートのジュリアン・アラフィリップが引っ張って助ける。

オート・ルヴェに向かう選手たちにとって、リエージュの雪は、背後に置いてきたエピソード…のはずだった。

悪天候の再襲撃にまず最初に気づいたのは、当然ながら先頭を行く8人だった。オート・ルヴェの下りで不穏な雨粒がポツリと落ち、そのうちとめようもない勢いで、冷たい雨が吹きつけ始めた。空から降るものはだんだんと白くなり、雨からみぞれへ、みぞれから雪へと変わっていく。

有名なスパフランコシャンサーキット近郊に、白い霞(かすみ)のような雪雲が待ち構えていたのだ。

何人かの選手はフィードゾーンでバイクを降り、先ほど脱いだばかりのジャケットを羽織りなおした。ロジェ峠(コル・デュ・ロジェ)に向かう集団の先頭で、モビスタのロリー・サザーランドとイマノル・エルビーティは、付着した雪が視界をさえぎらぬよう、しきりにアイウェアを拭っている。

気まぐれな天気は選手を翻弄しつづける。ものの10kmほどで吹雪はやみ、木々の間から陽射しがこぼれ始めた。ただ凍てつく寒さは変わらず、選手は白い息を吐きながら、今日最長の上り(4.4km)を上っていく。

逃げグループがロジェ峠の頂上(残り61km)を通過した時点で、メイン集団とのタイム差は3分を切った。相変わらずモビスターが牽引を続けるメイン集団から、トマ・ヴォクレール(ディレクトエネルジー)がアタック。ここにヴォクレールのチームメートであるリリアン・カルメジャーヌとアダム・イエーツ(オリカ・グリーンエッジ)も加わろうとするが、引き戻され、ヴォクレールだけがメイン集団に先行する。

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