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「今回の勝利はスペシャルなんだ。全てが計画通りに進んだからね。最初のステップは逃げに選手を送り込むこと。これはモホリッチが達成してくれた。次に起伏の接近に備えて、チーム全員が力を合わせて僕を好位置へ引き上げた。そしてコンティには、最終盤に僕の側にいる、という任務が与えられていた。最後の上りを待たず集団から飛び出したのだけは、少々『即興』だったんだけど」(ウリッシ、公式記者会見より)
計画を完了させたのは、もちろんウリッシの脚だった。区間最後の急勾配に突入した直後、まずはシッティングで、さらに畳み掛けるようにダンシングで加速すると、ライバル全てを振り払った。フィニッシュまで9km、ウリッシは完全なる独走態勢に持ち込んだ。
後方では総合上位を争う強豪たちが加速合戦を始めていた。最終8kmは下りだったし、ラスト2500mは長い直線だった。上りてっぺんでわずか20秒のリードしか有していなかったウリッシにとって、最後まで逃げ切れるのか、絶対的な確信は持てなかったはずだ。それでも、後ろを振り向かず、ひたすらペダルを回し続けた。
「行くしかない、何も考えるな、って自分に言い聞かせ続けた。ただ全力を尽くせ、ってね。最後はひどくきつかったし、監督は無線で怒鳴ってた。でも脚よりも、耳のほうが痛かったかも」(ウリッシ、ゴール後TVインタビューより)
背後からものすごい勢いで追い上げてくる25人の集団を、わずか5秒差で交わして、フィニッシュラインへ先頭で飛び込んだ。これまで手にしてきた4度の区間勝利とは違う、初めて独走で勝ち取ったジロの区間勝利だった。これはまた、「調子は抜群だったのに何かがズレていた」という今シーズン待望の1勝目でもあった。もちろん2016年ジロにとっては、初めてのイタリア人勝利である。
バルベルデ、ニーバリ、イルヌール・ザッカリン、エステバン・チャベス、ラファル・マイカ、ドメニコ・ポッツォヴィーボ、リゴベルト・ウラン、ミケル・ランダ、ステフェン・クルイスウィク……という総合表彰台候補がほぼ全員滑り込んだ追走集団から、最後にデュムランはするりと抜けだすと、2位フィニッシュ(1秒リード+ボーナスタイム6秒)をさらい取った。しかも総合2位に20秒差を付け、オランダで味わったようなコンマ差や1秒差という不安定な状態からもおさらばした。本人の見立てによれば、少なくとも今週いっぱいは、ばら色の日々を楽しめそうだ。
「今週は起伏がそれほどきつくないから、守り続けられるだろうね。木曜日に山頂フィニッシュが控えているけれど、調子が良ければ、あの程度の上りはまるで問題はない。それに日曜日には、僕が狙いを定める、個人タイムトライアルも待っている」(デュムラン、公式記者会見より)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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