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サイクル ロードレース コラム 2016年5月16日

ジロ・デ・イタリア2016 第9ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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移ろいやすい空模様が、劇的な結末を演出した。乾いた路面を走ったプリモシュ・ログリッチェは、第1ステージのリベンジを果たした。全身ピンク色で全力を尽くした最終走者ジャンルーカ・ブランビッラは、雨にも助けられて、勇敢にリーダージャージを守り切った。23歳のボブ・ユンゲルスが悪条件を跳ね飛ばしてフレッシュな走りを披露した一方で、本物の総合本命たちは、冴えた成績は残せなかった。大会2度目の休養日を控え、マリア・ローザ争いの結論はいまだ出ぬままだ。

40.5kmという長距離に、絶え間なく襲い掛かってくる起伏。上りは厳しく、下りはスリリングで、カーブは危険がいっぱい。すでに8日間も戦い抜いてきた選手たちにとって、スタートが遅め(第一走者は12時40分)だったのは、ありがたかった。しかし最終15人を除いて、スタートが1分間隔しかなかったのは、一部の選手にとっては災いだった。だって本気で走った選手たちは、あっという間に前走者をとらえることになったからだ。

たとえば、同種目で世界選4勝&五輪金メダルと無双を誇ってきたファビアン・カンチェラーラは、「前に見える選手に追いつこうと、無理に力を使ってしまった。そのツケを最終盤に払うことになった」(チーム公式HP)と後悔する。開幕直前に患った胃腸炎から、ようやく癒え始めていた35歳の肉体には、十分なパワーが残っていなかった。それでも区間4位と恥ずかしくない成績を収めたが、この日を限りに、帰宅を決意した。熱望していたマリア・ローザを着用するどころか、区間勝利さえもつかめぬまま、「スパルタクス」はジロから永遠に立ち去ることになった。

追い抜かれた選手が、追い抜いた選手を利用する事態も多々発生した。UCIルール2.4.18によると、タイムトライアル中に追いつかれた選手は、横の間隔を最低2mは開けなければならない。しかしアレクセイ・ツァテヴィックは、1分後に出走したトビアス・ルドビクソンに追いつかれると、そのままスウェーデン人の背中に張り付いた。テレビカメラもまた、その姿を延々と追い続けた。当然ながら、審判団からペナルティを課された。UCIルール12.040の40.1に則って、罰金100スイスフランと、なんと……6分48秒という大量のペナルティタイム!(ペナルティタイムは走行時速と違反距離に比例して決定される)

難しいコースを、道路が乾いているうちに急いで走り終えたのが、全186選手中42番スタートのプリモシュ・ログリッチェだった。まんまと51分45秒の暫定トップタイムを叩きだした。その後、小雨が降り始め、いつしか土砂降りに代わり、再び雨脚が弱まる中、プロ一年生は4時間じっと待ち続けた。……実は約10日前の大会初日は、1時間待った果てに、トム・デュムランにわずか0.01秒差で首位の座を奪い取られた。だから最後まで、決して油断はできなかった。

かくも長い待ち時間の果てに、ログリチェはプロ人生で初めての勝利を手に入れた。スキージャンパーとして世界ジュニア団体戦を勝ち取った経験はあるけれど、個人としては、初めて出場したグランツールで、初めてつかみとった大きな栄光だった。

「本来なら大喜びして飛び跳ねるべきなのかもしれないけど……。でも、おかしなことに、実感がわかないんだ」(ログリチェ、公式記者会見より)

ほんの10日前までほぼ無名だった選手の快挙には、3つの逸話が隠されていた。1つめは、出走直前に自転車交換を余儀なくされたこと。スタート前の機材検査で、レース審判からバイクが規定外と指摘され、あわててチームカーの屋根に積んであった交換用バイクに飛び乗ったという。2つめは、走行中にサイクルコンピューターやボトルを落としてしまい、一時は走る気力を無くしてしまったこと。それでも監督から励まされて、なんとかリズムを刻み続けた。そして3つ目が;

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