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帰り間際にもう1勝。ジロ離脱を決めていたこの日に、ポイント賞首位に立つアンドレ・グライペルが、今大会最多の区間3勝目を手に入れた。チーム全員で勝ち取った栄光を、スプマンテの弾ける泡で祝った後は、7月のフランス一周のために頭を切り替える。総合候補たちは少し早目の「ニュートラル」のおかげで、フリーホイールで静かに1日を終えた。
起伏図だけを見れば、21日間で、一番簡単なステージのはずだった。しかし、朝から降り続いた冷たい雨が、少々難しい時間を演出した。
「路面が濡れていたせいで、常に集中力を必要としたからね」(ボブ・ユンゲルス、ゴール後インタビュー)
しかも平坦な道の果てには、市街サーキットを、約3周回る。1周8kmのサーキットには、広角3回+90度11回+鋭角1回=トータル15回のカーブが待ち受けている。市街地ゆえに、道幅は当然、それほど広くない。つまり、ただでさえテクニカルなサーキットだというのに、路面が濡れていれば、危険は大幅に増す。
……だからこそ審判団は、ステージのかなり早い段階で、周回コースのニュートラル化を発表した。2度目のフィニッシュライン通過=ゴール前8kmの時点で、タイムが計測されることが決まった。
雨の中で逃げ出したダニエル・オスとミルコ・マエストリの後ろで、メイン集団は淡々とペダルを回した。タイム差は最大3分程度しか与えなかった。濡れた路面では、つかず、離れず、一定距離を保つのが懸命だ。特に最後の1日に意欲を燃やすグライペルや、コース上からわずか10km程度の町で生まれ育ったサッシャ・モドロが、チームのロット・ソウダルやランプレ・メリダを総動員して、きっちりちとタイム差制御に取り組んだ。
陰鬱な雰囲気の中で、ステージ途中に2カ所用意されていた中間ポイントだけは、ほんの少しだけ戦いが色づいた。なにしろポイント賞首位が本日限りでリアイアする。翌第13ステージからは、次点選手に赤ジャージ着用の権利が譲り渡されることになるのだ。なにより、最終日トリノでの栄光も――大会が折り返し地点を過ぎ、誰がリタイア予定で、誰が完走予定なのか見えてきて――、そろそろ本格的に計算すべき段階がやって来た。
もはや得点収集には無関心なグライペルの目の前で、2度の中間スプリントが繰り広げられた。いずれも1年前に「無冠」のまま赤ジャージを仕留めたジャコモ・ニッツォロが、集団首位=3位通過(8pt×2)を果たした。区間2勝のまま立ち去ったスプリント・リーダーのマルセル・キッテルに代わって、マッテーオ・トレンティンが2度の4位通過(6pt×2)をさらいとり、前日第11ステージはチームTTばりの列車で獲りに行ったアルノー・デマール(4pt×2)は、いずれも5位に終わった。
周回コースに入り、逃げの2人があっさりと吸収される頃には、すっかり雨も止んでいた。それどころか、路面も、完全に乾いていた。それでも、周回コースに実際突入してみて、すべての選手が、マリア・ローザと同じように感謝したに違いない。
「ニュートラルは、非常に賢い決断だったと思う。おかげで僕たち総合上位の選手たちは、安全に、フィニッシュラインを超えることが出来たから」(ボブ・ユンゲルス、ゴール後インタビュー)
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