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クルーゲが人生初めてのグランツール区間勝利に歓喜した、そのほんの2日前には、所属チームのイアムが今季限りの解散を発表したばかりだった。2013年に発足したスイスチームは、2015年にワールドツアーへと昇格した。しかし成績が思うように上がらず、サブスポンサーの成り手を見つけることができなった。さらには自転車界のヒエラルキーの頂点へ向かって、順調に成長していくことができなかった……、とチームオーナーのミシェル・テタズは考えているらしい。たしかにチーム創立4年目で、これまでワールドツアーの勝利はわずか4つだけ……。
5つ目の、そしてチームにとって創立初めてのグランツール勝利は、少々寂しい思い出となった。
「これがミシェルの考えを変えるとは思わない。ただチームの解散が発表された後も、僕ら選手はチームのグランツール初勝利目指してひたすら集中し続けたんだ。僕らにはまだ日曜日までジロが残っているし、まだツールとブエルタもある。勝利に向かって突っ走っていくだけだよ」(クルーゲ、公式記者会見)
トラック競技ではオムニウム世界銀メダリスト(2008年、20016年)、さらには五輪のポイントレース銀メダリストに上り詰めたことはあるが、優勝だけは逃してきた。5月のイタリアで「地球上で最も幸せな男」になったクルーゲにとって、この日のレースはちょっと「ポイントレースみたいだった」とのこと。その心は、長い長いスプリントを耐えねばならなかったから。
区間2位にはまたしてもニッツォロが飛び込み、ポイント賞のリードを8pt→48ptに大きく開いた。2年連続の赤ジャージに大きく近づいた。マリア・ローザのクルイスウィクは極めて安全に首位の座を守り、また1日、トリノへと接近した。
「僕はすでにジロを勝った、とは思っていない。ただ自分ができることは、ベストを尽くすこと。これまでの2週間半に自分がやり続けてきたことを、そのまま遣り通すこと。自信を持って走るし、僕には弱点なんかない」(クルイシュウィク、公式記者会見)
また完走を目指す山本元喜は、162位とプロトン内では最終位ではあるものの、で17日目のレースを無事に走りきった。完走を目指す我らが日本人にとって、トリ到着まで、あと4ステージに迫っている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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