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「できるだけ集団の後ろに姿を隠して、力を温存するよう努力しました。小さな起伏でアタックの打ち合いが始まると、一気にきつくなりましたが、それでも必ず最後には集団はひとつにまとまっていました。でも、フィニッシュ後の登りでぐんとスピードが上がって、そこで振り落とされてしまいました」(山本元喜、ゴール後インタビュー)
旧市街の、石畳の激坂で、前方集団は一気に10人程度に絞り込まれた。ブラットが回収され、そのまま2級プラマルティーノ峠に突入すると、今度はチームメートのジェイ・マッカーティーが攻撃に転じた。4.6kmの山道では、キャノンデールのモレノ・モゼールも単独で加速を試みた。
しかし、重要なアタックを作り出したのは、むしろエティックス・クイックステップだった。今大会すでに区間3勝、マリア・ローザ着用6日間、第4ステージ以降マリア・ビアンカ着用……とすでに大いなる成功を収めてきたベルギーチームの、野心が決して鎮まることはなかった。前日はポイント収集に走ったトレンティンが、この日は山道をがむしゃらに牽引すると、第8ステージ勝者ジャンルーカ・ブランビッラを高速で発射した。マリア・ローザを2日間着た男のリズムにしがみつけたのは、モゼールだけだった。
67年前に「ただ1人の男」ファウスト・コッピが伝説的な大逃げを決めたピネローロの町へ、「2人の男」が先頭で突進していく。上りも下りもほぼ互角だった。ゴール前2.2kmの石畳の激坂は、順番にアタックを打ち合うも、やはり引き分けに終わった。そこからの下りは、ブランビッラがヘアピンカーブを危険なほど積極的に攻めた。
ところが、ゴール前1.4km、突然ブランビッラが攻撃的態度を封印した。モゼールの後輪にぴたりと張り付くと、しきりと後方を気にし始めたのだ。
実は、チームカーからの無線で、「引くな」との指示が入っていた。ほんの10秒ほど後ろに、チームメートが迫っていたからだ。2人から48秒遅れで山頂を越えたトレンティンは、見事なダウンヒルテクニックでサッシャ・モドロ、イヴァン・ロヴニー、ニキアス・アルントを捕らえた。さらには激坂で、邪魔者を振り払っていた。
「登りの時点で、前に追いつけると信じていたかって?いやあ、どうだろう、分からないや。ただブランビッラを山で助けた後は、ひたすら自分のペースで走り続けた。おかげで息を吹き返して、山頂までに体力を取り戻すことができたんだ。前を行く3人に追いついた後も、ブランビッラがさらに前にいたおかげで、後ろに張り付いているだけでよかった。体力をさらに温存することができたのさ」(トレンティン、公式記者会見)必死にフィニッシュへと突き進むモゼールは、僕が追いついてきていることに気がついていなかったんだろうなぁ……、びっくりしただろうね……、といたずらっ子のように笑うトレンティンは、ゴール直前350mで2人に追いつくと、そのまま鮮やかに抜き去った。勝者のガッツポーズの背後では、チームメートを上手く勝たせたブランビッラも両手を挙げた。
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