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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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フィニッシュまで残り9km。ニーバリは大きく加速する。ただチャべスと、下りで追いついてきたミケレ・ニエベと、逃げで唯一生き残ったディエゴ・ウリッシだけがすがりついた。ゴール前5.5km、もう1度加速を切った。チャべスだけが張り付いてきた。しかし、さらに500m先で、大きな一撃を食らわせると、もはや覚醒した「メッシーナの鮫」についていける者などいなかった。
「腹の底から気力を振り絞った。ようやく自分の感覚を取り戻せた。ここ数日はひどく難しくて、上手く状況を切り抜けられなかったけど、今日ついに出口を見つけた。開放された気分だ。走り終えた後は、ひたすら泣きじゃくることしかできなかった」(ニーバリ、ゴール後インタビュー)
2014年ツールでは区間2位で勝利を逃した(しかし総合ライバルから大きくタイムを奪った)リズールの山頂で、ニーバリはジロ区間6勝目を手に入れた。フィニッシュ地の山頂では、天を指差した。自らが世話する自転車チームに所属し、今大会中盤に14歳で命を落としたロザリオ・コスタ君に勝利を捧げた。
ラスト5kmは大いに苦しんだと告白するチャベスは、53秒遅れの区間3位で終えた。ピンク色のジャージが4分54秒遅れで山頂に姿を現した頃には、コロンビア人としての、史上3人目のマリア・ローザ着用を決めていた。チャべス本人にとっては、昨年のブエルタのマイヨ・ロホ5日間に続く、2度目のグランツールリーダージャージとなる。また2012年に活動を開始したオリカ・グリーンエッジは、3大ツール全てでリーダージャージ獲得の喜びを味わってきたけれど、大会3週目でのリーダージャージは初体験となる。
「スペシャルな1日だよ。僕にとっても、チームにとっても、祖国にとっても。マリア・ローザが本当に嬉しいし、ジロ総合優勝にこれほどまでに近づくことができてすごく興奮してる。クライスヴァイクの落車は気の毒だった。でも落車は自転車レースの一部だから」(チャべス、公式記者会見)
自らも落車で大いに苦しめられた経験を持つ26歳に対して、失望するオランダ人記者からは「でも、落車さえなかったら、クライスヴァイクが最強だったとは思わないか?」という少し辛らつな質問も飛んだ。
「でも、過ぎ去った時間は決して巻き戻せないし、起こらなかったことの答えを誰も知ることはできない」(チャべス、公式記者会見)
マリア・ローザの持ち主が入れ替わっただけでなく、総合トップ5もシャッフルされた。ニーバリが総合4位から44秒差の2位に浮上し、クライスヴァイクは首位から1分05秒差の3位に陥落した。また2分14秒遅れで一緒に区間を終えたバルベルデ&マイカだが、前者は3位→4位1分48秒差と順位を下げ、後者はザッカリン棄権のため6位→5位3分59秒差と順位を上げた。
なにより総合のタイム差が大きく縮まった。前日までは総合首位と2位の差だけで3分。5位の遅れは4分50秒にも達していた。そして第19ステージを終え、飛び切り厳しい山岳ステージをあと1つ残して、首位から4位までの差が1分48秒。そもそも3分差をひっくり返しての逆転首位など不可能だと思われていたのだから、その半分程度のタイムなら……。
「明日はとてつもなくハードな1日になるだろう。マリア・ローザを持ち帰るために、できる限りの全力を尽くすよ」(チャベス、公式記者会見)
またユンゲルスも1つ順位を上げ総合6位に。なにより新人賞では2位以下とのタイム差を22分以上に開いて、トリノでの白いジャージをほぼ確定させた。また区間2位に滑り込んだニエベが、山岳賞でも2位に浮上。最後の1日で、ダミアーノ・クネゴと青ジャージを巡る争いを繰り広げるのか。また毎日のように逃げを繰り返すウリッシは、この日も4位と驚異的な成績を残した。ただしポイント賞は33pt差の2位で、どうしてもジャコモ・ニッツォーロを追い抜けずにいる。
そして「今朝は足がむくんでいで、昨日の逃げの影響を感じました。山ではやはり苦しみました」とゴール後に語った山本元喜も、ついに完走まであと一歩に近づいた。
「まだほっとはしていません。明日走り終えることができなければ、ここまでやってきたことの全てが無駄になりますから。血ヘドを吐いてでも、完走を目指します」(山本元喜、ゴール後インタビュー)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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