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「僕の国にとってはすごく大切な勝利だよ。エストニアは人口が100万人くらいしかいない小さな国だから、区間を勝っただけでもビッグニュースさ。いや、むしろワールドチームに僕とカンゲルトの2人も選手がいること自体が、すでにファンにとってはとてつもない事態なんだ。エストニア人として初めてのジロ区間勝者になることができて、本当に誇らしい」(レイン・タラマエ、公式記者会見)
区間優勝の表彰式を笑顔で見上げながら、親指を立て、友を賞賛したカンゲルトは、もちろん、単純に逃げ集団から落ちて行ったわけではない。3つ目の峠ロンバルダに入ると、後方メインプロトンでも、いよいよ最後の戦いが始まっていたからだ。ちなみに前日第19ステージは、ステージ真ん中の「チーマ・コッピ」アニェッロ峠で大バトルが勃発していたから、この日も2番目のボネット峠——しかも標高はアニェッロよりほんの29m低いだけの——で何かが起こるのでは?と予想する声も多かった。
「今日のコースは良く知っていたんだ。ツールでボネット峠を登ったことがあったから。非常に長くて、難しい峠だ。でも、今日のキーは、ロンバルダだった。だからカンゲルトが十分に先に行ってしまうまでは、ヤコブ・フグルサングとミケーレ・スカルポーニとで集団を制御した」(ニーバリ、公式記者会見)
標高が高く(2350m)、山道が長く(19.8km)、勾配が厳しい(平均7.5、最大15%)、そんなロンバルダ突入が合図だったようだ。アスタナのフグルサングが集団を猛烈に引き始め、プロトンを後方からどんどんちぎっていった。続いてはスカルポーニが老練の技を見せた。前日もチーマ・コッピをすいすいと先頭でよじ登り、最終盤にはニーバリの元に駆けつけた36歳大ベテランは、急加速で、集団を前方に大きな亀裂を作った。当然のようにニーバリは後輪に張り付いた。マリア・ローザ姿のエステバン・チャベスを筆頭に、ただ総合一ケタ台の選手6人だけが、2010年ジロ総合覇者の強力な一発を凌ぐことができた。
そして、ゴール前15kmの、アーチをくぐった瞬間だった。ニーバリが大きなアタックを撃った。1発目で首位チャべスと4位アレハンドロ・バルベルデ以外は全て振り落とした。ほんの数百メートル先で2発目をぶっ放した。邪魔者は全て消え去った。ただし、ここからは、「タイム差」という見えない敵と戦うことになる。
「加速した後は、チームカーが常に無線でタイム差を伝えてきてくれた。秒数を聞くたびにやる気が増した」(ニーバリ、公式記者会見)
ロンバルダの山頂まで2kmほどの地点で、カンゲルトが本日2度目の作業に取り掛かる。今回はチームリーダーのために、全力で引いた。おかげでニーバリは、山の上で、すでに総合首位チャべスから59秒のリードを奪っていた。逆転マリア・ローザは、この時点ですでに達成されていたことになる。自らに尽くしてくれたアシストに別れを告げ、再び1人でフィニッシュを目指し始めたニーバリは、しかし、決して気を緩めなかった。最後までペダルを高速で回し続けた。聖母マリアの母アンヌを奉る聖地へと続く、ひどく曲がりくねった激坂を、ダンシングで力強く駆け上がった。
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