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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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イタリア人の手にジロが戻ってきた。興奮に突き動かされたように、山頂の小さな表彰台エリアには、熱狂したティフォジが雪崩れ込んできた。鮫のデザインをあしらった青い旗が、風をいっぱいにはらみ、「グランデ!」「グラッツェ」と感動したような掛け声があちこちから聞こえてくる。あたりいっぱいに撒き散らされたスプマンテの白い泡と、天から降り注ぐピンク色の紙ふぶきの隙間から、幸せな男の笑顔が見えた。ヴィンチェンツォ・ニーバリが、見事な逆転劇を成功させ、2016年ジロ・デ・イタリア総合優勝に王手をかけた。
栄光への独走を始めたのは、ゴール前15kmからだった。しかし、マリア・ローザ略奪への布石は、スタートフラッグが振り下ろされた瞬間に置かれていた。なにしろ、ほんの2日前までは、4分43秒遅れの総合4位だった。前日にチーム総出の攻撃で総合2位に浮上したが、いまだピンク色のジャージまでは44秒足りない。しかも、今大会最後の「逆転優勝」のチャンスは、わずか134kmと極めて短い。悠長に構えている余裕などなく、作戦やタイミングのミスも決して許されない。だからスタート直後に逃げ出した集団に、山に強いタネル・カンゲルトを、すかさず送り込んだ
そんなステージ序盤の見どころは、今大会最後の青ジャージの争いだった。なにしろヨーイドンと共に上り始めた道で、山岳賞1位〜5位の全員が飛び出したのだ。13日間ジャージを守ってきたダミアーノ・クネゴだけは、数キロ先であっさり脱落してしまうのだが……。すでに6ステージ前から1ptも追加できていなかった2004年ジロ総合覇者に対して、前日2位に急浮上したミケレ・ニエベが調子の良さを見せた。
チームリーダーであり、バスクの仲間であるミケル・ランダが体調不良でリタイアした後、第13ステージ制覇でスカイに小さな喜びを与えたのが、このニエベだった。この日は最初の1級峠で3位通過12ptを計上すると、2つ目の1級峠は独走で1位通過35ptを収集。この時点で山岳賞首位に躍り出た。もちろん残る2つの山でもきっちり着順を果たし、1日の終わりには、鮮やかなブルージャージを身にまとっていた。幸いにも、最終日には、もはや1つの山も存在しない。トリノでは山岳賞受賞者として表彰台に登る。
カチューシャも、同じように、リベンジを必要としていた。前日にチームリーダーのイルヌール・ザッカリンが、チーマ・コッピからの下りで激しく落車し、総合5位のまま大会を離れていったからだ。
「昨日、僕らが3週間ずっと続けてきた仕事が、一瞬で全て無駄になってしまった。たしかにザッカリンが個人タイムトライアルで3回も転んだ時点で、総合優勝のチャンスは失っていたのかもしれない。でも、昨日は、本当に全てを失ったんだ。だから監督から言われた。『ザッカリン、ザッカリン、ザッカリンのことを考えろ』って」(レイン・タラマエ、公式記者会見)
コフィディス時代は総合リーダーとして走っていたヒルクライマーは、すぐに逃げに乗れたわけではなかった。しかし最初の山で追走を仕掛けると、山頂にたどり着くころには前方の集団を捕らえていた。その後、10人前後のエスケープは、くっついたり離れたりを繰り返し、タラマエも何度か後方に押しやられたこともあった。
そんな時、頼りになったのが、同じエストニア出身のカンゲルトだ。3つ目の峠の序盤で、逃げ集団内でアタックがかかり、少し出遅れてしまったタラマエを、なんと前方まで引っ張り上げてくれたのだ。その後アスタナの忠実なるアシストは、静かに後方へと脱落していったのだが……、チームの切なる願いを背負い、母国の友の後押しを受けたタラマエは、ゴール前14kmで勝利のアタックを決めた。
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