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サッカーフランス代表が、欧州選手権準々決勝にて5‐2でアイスランドを破った……そんな前夜の喜びにに酔いしれるフランスのスポーツファンに、ヴォクレールは間違いなく大きな興奮を振りまいた。あくびが出るようなレースに、動きを与えただけではない。大逃げでマイヨ・ジョーヌ10日間×2回を成し遂げてきたヴォクレールが逃げることで、「もしかしたら……」というサスペンスの香りも漂い始めた。
「自分の勝利を考えた、と言ったら嘘になるなぁ。むしろチームメートのブライアン・コカールのために飛び出したんだ。だって僕も年を取って、もはや、ラスト10kmのポジション争いで、アシストすることはできなくなった。だけど、前に飛び出すことなら、僕にもできる」(ヴォクレール、ゴール後インタビューより)
そう、ヴォクレール本人は、この平坦ステージが逃げ向きではないことを十分に承知していた。この日が決して、完全なる休養日ではないことも。案の定、ゴール前52.5kmの中間ポイントでのスプリントをきっかけに、プロトンは少しずつスピードを上げていった。ラスト20kmは、そこまで温存してきた体力を、まさに全力で放出した。スプリンターチームがこぞって隊列を組み上げた。特にアンドレ・グライペル擁するロット・ソウダルが、集団前方に陣取った。マルセル・キッテル属するエティックス・クイックステップや、さらにはスカイさえも、積極的に牽引に加わった。プロトンは恐ろしく細長く伸び、前にいる2人を急速に追い上げていった。
逃げ巧者のヴォクレールと、若きフォンセカは残る力を振り絞って、ぎりぎりの逃避行を続けた。しかし歯を食いしばっての抵抗もむなしく、ゴール前8kmで、大きな集団に飲み込まれた。敢闘賞はフレンチアイドルのヴォクレールに渡り、215kmも逃げ続けたフォンセカには、思い出だけが残された。
スプリント列車は乱立し、最終盤は時速70km近くまでスピードは上がった。せめぎあいを潜り抜けて、最終コーナーへ真っ先に突っ込んだのは、ロット・ソウダルだ。カーブを抜けたところで、グライペルが先頭に立った。ラストストレートは300m。少々先は長く、微妙な上り調子だったが、ロストックのゴリラは力強くペダルを踏みこみ、フィニッシュラインを一心に目指した。
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