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「ものすごい声援だった。鳥肌が立った。どうにか自分の感情をコントロールしようと努めたよ。総合争いに生き残るためには、体力を無駄遣いすることは絶対に許されないからね。でも、この山は、道をよく知っていた。だから最後にトライした。あそこでのアタックなら、それほど損失はないと考えたから」(バルデ、ゴール後TVインタビューより)
バルデ本人に損失がなかったとしても、この加速が、コンタドールに損失を与えた。大部分の総合優勝候補が地元っ子の動きにすかさず反応したのに対して、もう1人の3大ツール全制覇チャンピオンは、流れに飛び乗ることができなかった。
「なんとかしがみついていたけれど、最後の最後に遅れてしまった。落車でのケガが、まだ痛むんだ。でも今の僕がやるべきことは、落ち込むことではない。無理に動かずに、体力を温存して、この後の戦いに向けて体を回復していくことだけ」(コンタドール、ゴール後インタビュー)
ヴァンアーヴェルマートから5分04秒遅れでホアキン・ロドリゲスとダニエル・マーティンが、5分07秒遅れでその他の有力候補は山の初戦を終えた。コンタドールは5分40秒遅れで、つまり大部分のライバルから33秒を失ったことになる。また総合ではクリス・フルーム、ナイロ・キンタナ、バルデ、アル等々はそろって5分17秒差で並んでいるが、コンタドールはすでに6分38秒差と、ピレネー突入を前に1分21秒のビハインドを背負ったことになる。
またランプレのルイ・メインチェスは、ステージ中盤で集団落車に巻き込まれたが、問題なくメイン集団(5分07秒遅れ)で1日を終えた。落車直後には、新城幸也がアシストとして傍に付き添う姿も、テレビ中継で映し出された。大会初日は単独落車で、右肩と左親指を痛めた新城だが、この日は後ろから突っ込まれて、再び左親指を大きく打ち付けた。
「いやー、今日はきつかった!死ぬかと思いましたよ。それに指も痛い。折れたんじゃないか、って思うくらい!!」
……と繰り返しながらも、新城は楽しげに笑っていた。2週目に向けて、気持ちも体調も、間違いなく上がっている。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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