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「今日はポイント収集に走る必要があった。ただ、ポイントを最大限稼ぎたいなら、ステージを勝つのが最高の方法だったはずなんだけど」(ピノ、ゴール後TVインタビュー)
ちなみに、2つ目と3つ目の山の間には、中間ポイントが設定されていた。つまり普通のスプリンターには、手も足もでない場所である。だからこそペーター・サガンは、毎年恒例、中間ポイント収集の旅に出た。世界チャンピオンジャージが、難関山岳を駆け上がった。もちろんトップ通過20ptは手に入れた。そこから先はクールに、フィニシュまでの道のりを楽しむだけ。首位奪還まではいまだ7pt足りないけれど、マイヨ・ヴェールに着替える日も、そう遠くはなさそう。
4つ目の峠を下り降りるころには、先頭集団は10人に絞り込まれていた。いよいよステージ優勝へ向けて、争うべき時が来た。コンタドールの元忠実なアシストで、「リーダーとしてのありかたはアルベルトから学んだ」と常々語るダニエル・ナバーロは、何度も加速を切った。サッカー欧州選手権の決勝戦を見るために、当夜は「いつもよりも早く夕食を済ませたい」とチームに申し入れていたピノは、自らの脚で、責任をもって追走を行った。上りでは遅れるも、下りで追いついたルイ・コスタも、やはりポルトガル代表の幸運を祈りつつ、積極的に加速を繰り返した。
しかし、大きな一撃を繰り出したのは、そこまで静かに姿を潜めてきたトム・デュムランだった。フィニッシュまで12.5km。ペダルを力強く踏み込むと、一気に独走へと持ち込んだ。本人が言うところの、個人タイムトライアルへと、と走り出していった。
「今日はほとんど先頭交代に加わらなかった。だから逃げの中では、もしかしたら僕が、最も強かったのかもしれない。ステージの最後は、タイムトライアルのつもりで走った。僕を追いかけてくる選手たちにとっては、おそらく、ひどく厳しかっただろうね」(デュムラン、公式記者会見)
谷間には強い向かい風が吹き付けていた。コスタやピノ、マイカやナバーロは、代わる代わる、協力したり分裂したりしながら、デュムランを追いかけた。リオ五輪ではタイムトライアルで金メダルを狙うスペシャリストには、ヒルクライマーが束になっても叶わなかった。
さらに山頂まで残り5kmとなり、標高も2000mに近づくと、空から矢のように雨や雹が降り注いだ。ただ、どれほど気温が下がっても、どれほど路面が滑りやすくなっても、半袖ジャージのオランダ人はひたすら前を見て黙々と走り続けた。
「最後はさすがに、パワーが落ちてきたのを感じた。でも、サイクルコンピューターの数値は、見ないようにした。スピードも落ちていたけれど、誰にも追いつかれなかった。僕が勝ったんだ。本当に僕にとっては、スペシャルな1日になった」(デュムラン、公式記者会見)
2015年ブエルタでは人生初めてのグランツール区間勝利を上げ(2勝)、マイヨ・ロホを6日間守る活躍を見せた。2016年ジロでは、初日タイムトライアルをさらい取って、やはりマリア・ローザを6日間身にまとった。そしてこの日は、3グランツール連続のステージ優勝。さすがに3グランツール連続での、リーダージャージ着用は不可能だったようだけれど……。
「誇らしいよ。歴史を刻めたなんて素敵だね。3グランツール連続で区間を制したオランダ人は、おそらく歴史上でも存在しないんじゃないのかな。今ツールには総合争いに来たわけじゃない。僕はまだ、フルームやキンタナと戦えるレベルにはない。ステップをあと2つか3つ踏む必要がある。もちろん将来的には、ツールの総合トップ10を争えるような選手になりたいな」(デュムラン、公式記者会見)
そのフルームとキンタナは、雨にも負けず、雹にも負けず、アンドラ・アルカリスの山頂へ向かって熾烈な覇権争いを繰り広げた。ただしマイヨ・ジョーヌが幾度となく、積極的に高速ペダリングを披露した一方で、雪のステージなら得意のコロンビア人は、ひたすらフルームの動きに対応を繰り返すだけだった。
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