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サイクル ロードレース コラム 2016年7月11日

ツール・ド・フランス2016 第9ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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黙示録のような風景の中で、オランダ最強のルーラーが、歓喜に酔いしれた。ピュアクライマーたちの追い上げにも、空から落ちてくる雨あられにも、トム・デュムランは決して屈しなかった。前日の驚異的な下り能力に加えて、悪天候への高い順応力さえも証明したクリス・フルームは、危なげなくマイヨ・ジョーヌを守った。大会1度目の休息日前日、アルベルト・コンタドールは落車による負傷から復調できぬまま、志半ばで大会を去った。

極端な1日だった。2016年ツール最難関ステージには、5つの峠が待ち構え、獲得標高は5000mを超えた。温度計が示す数字は、41度から10度までと、とてつもなく幅があった。しかも、ちょうど選手たちの到着に合わせたかのように、雨と雹が山肌を叩きつけた。あたりには雷が鳴り響き、傾斜のついた道で、まるで川のように水が流れた。

スタート直後から道は上り始めた。たくさんのステージ優勝志願者と、3人の山岳賞候補と、1人のマイヨ・ヴェールを追い求める者とが、大急ぎで逃げ出した。なにより衝撃的だったのは、アルベルト・コンタドールとアレハンドロ・バルベルデが、前方へと飛び出していったこと!

特に7年ぶり3度目の総合制覇を目指して、ツールに乗り込んできたコンタドールは、初日と2日目に落車の犠牲になった。体のあちこちを痛め、思うような走りができなくなった。総合ではすでに3分以上の遅れ。前日のフィニッシュ地では、落ち着いた口調で、「状況を分析して、どう進んでいくか考える」と語っていた。こんな偉大なるチャンピオンは、遠くから、起死回生の一発を試みた。

「ベストを尽くした。レース序盤でアタックした。でも不可能だった。2回の落車のせいで、単純に、脚が上手く回らなかった。今朝は少し熱があったし、喉も痛かった。それでも、一発トライしようと、決めたんだ」(コンタドール、チーム公式リリース)

2012年ブエルタの伝説的な逆転劇「フエンテ・デ」のような、奇跡は起こせなかった。だから共に逃げ出した多くの選手にチャンスを与えるためにも、3大ツール王者(とバルベルデ)は、静かにメイン集団へと下がっていった。なにより、もはやこれ以上、走り続けることはできなかった。ゴール前90km。コンタドールは自転車を降りた。

「びっくりした。最初の上りで攻撃してたから、調子は悪くないんだとばかり思っていたのに……。たしかに僕にとっては、『ゴール前100kmでもしかしてアタックしかけてくるんじゃないか』なんていうストレスをもはや感じずに済むわけだから、ありがたいこと。でもツールにとっては大いなる損失だ。コンタドールはいつだって、見ごたえある攻撃を作り出す選手だったから」(フルーム)

合計7つのグランツールタイトル(+剥奪された優勝が2回)を誇るコンタドールにとって、途中棄権は2014年ツールに続く人生2度目。ちなみに2年前は、直後のブエルタで、見事な復活優勝を果たしている。今年も、8月開幕のスペイン一周で、戻ってきてくれるだろうか。とにかく、「今季限りで引退」との宣言は撤回しているから、1年後のツールには必ず帰ってきてくれるに違いない。

コンタドールが退いた逃げ集団で、最初に繰り広げられたのは、山岳ジャージの引っ張り合いだった。赤玉姿のラファル・マイカ、わずか1pt差のティボ・ピノ、さらには前日まで山岳賞首位を3日間守ってきたトーマス・デヘントの3人が、そろってエスケープに滑り込んでいた。しかも前者2人は、2日連続の逃避行。それぞれに、開幕時の目標--マイカはコンタドールの山岳アシスト、ピノは自らの総合優勝--から、シフトチェンジせざるを得なかった。

1つ目の山から、山頂スプリントが繰り広げられた。まずはピノが先行し、2つ目の山はデヘントが満点を手にした。さらに3つ目の山へ向かってベルギー人はアタックを打ち、先頭通過後も、孤独な遁走を試みた。本物のヒルクライマーたちが追撃を仕掛け、大逃げ巧者は、前から引きずり降ろされた。こうして4つ目の超激坂では、ピノが取り返した。

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