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「数年前のジロで、ナイロ・キンタナが前方へと走り出していったあの区間と、ちょっと状況が似ていた(2014年第16ステージ)。だから僕は、彼から絶対に目を離さなかった。キンタナが同じことを再びやらかしてしまわないように」(フルーム、公式記者会見)
おかげで順調にタイム差は開いた。山を登って降りた後の、補給地点では最大7分のリードを得た。中間ポイントでは、まったく争わずして、サガンが満点の20ptを懐に入れた。この現役世界チャンピオンが、念願のマイヨ・ヴェールを取り戻した時点=残り75kmでも、タイム差は6分半近く残っていた。
後方のメイン集団が、追走を試みなかったわけではない。スプリンターと呼ばれる部類の中で、アンヴァリラ登坂を終えても力を残していた者たちは、集団フィニッシュに持ち込もうと目指していた。とりわけアレクサンドル・クリストフが、チームに追走作業を命じた。しばらくはカチューシャが孤独に隊列を走らせ、イアムも途中から協力体制に入った。前方にシャヴァネルを送り込んだディレクトエネルジーも、後方ではブライアン・コカールのために牽引作業を開始した。
ところが終盤に入ると、またしても悪天候が、逃げ集団に味方する。細かい雨と強い横風の中、メイン集団に、軽い分断が発生したのだ。ここでも、やはりフルームが、危険回避に動いた。スカイの面々と共に集団先頭に進み出ると、プロトンに「蓋」を閉めた。追走チームは完全に封じ込まれた。万事休す。一方で逃げ集団の選手にとって、この横風こそが、目的を「逃げ切り」から「ステージ優勝」へと切り替える絶好の機会だった。
「僕はステージの間中、エネルギーをたくさん使った。こういった大きな逃げでは、多くの選手が働こうとしないんだ。だから全員がしっかり先頭交代するよう、常に目を配った。そして横風区間に入ったところで、自らアタックをかけた」(サガン、ゴール後TVインタビュー)
ゴール前25km。サガンが猛烈に加速を切ると、集団内の邪魔者を一気に吹き飛ばした。15人中9人が犠牲となった。ただオリカの3人に、フレフ・ヴァンアーヴェルマート、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン、サミュエル・ドゥムランだけが、サガンに足並みをそろえた。
サガンはその後も、寛大すぎるほどに、努力を惜しまなかった。最後の3級峠に突入する手前まで、ダーブリッジとほぼ2人で、スピードアップを繰り返した。オリカでは続いてインピーが、牽引役を引き継いだ。時に猛烈な加速で、世界チャンピオンを引きちぎりにかかるも、必ずサガンは自ら穴を埋めに行った。マシューズはただ2人のチームメートの仕事を信頼して、ひたすらアルカンシェルに張り付くだけだった。昨秋の世界選手権で銀メダルに泣いたときのような状況には、決して陥らない自信があった。あの日はサガンの独走を許し、チームメートが自らに対してスプリントを打ってきて……。
「僕とサガンは、これまで何度も一騎打ちをしてきた。たとえばツール・ド・スイスでは、彼に2度敗れている。サガンこそが、今日、破るべき男であることはわかっていた。間違いなく、逃げ集団の中で、彼こそが最強だった」(マシューズ、公式記者会見)
残す3選手も、サガンとオリカの仕事を利用しつつ、勝負の時をうかがった。ドゥムランとヴァンアーヴェルマートは、どうやらゴールスプリントを狙っていた。ボアッソンハーゲンは向かい風吹き付ける下り坂で、大きな一発を打つことにした。やはりサガンに回収された。
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