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ゴール前12km。前方に2選手が飛び出した。サガンと……、3年前のあの日もやはり、サガンと共に分断に飛び乗り、リーダーを精一杯助けたマチェイ・ボドナールだった。背後のあらゆるしがらみを、力づくで断ち切るように、ティンコフコンビがほんの少しずつ、集団から、距離を開いていった。
たった1人だけ、その穴をどうにか埋めようと、がむしゃらにペダルを回す選手がいた。黄色のフルームだ!
「サガンが飛び出したのを見て、行かなきゃならない、と感じた。簡単なことじゃなかった。とにかく全力でペダルを回した」(フルーム、ゴール後TVインタビュー)
ほんの数日前に下りアタックで衝撃を与えたフルームが、今度は平坦でどでかいサプライズを演出した。北クラシック巧者のゲラント・トーマスが、やせっぽちのヒルクライマーの後を慌てて追いかけるという、まるで冗談のようなシーンさえ繰り広げられた。
「自問自答したんだ。行く価値があるだろうか?って。でも、とにかく僕は、あらゆる地形でライバルたちからタイムを奪わなきゃならない。特にキンタナは、3週目に強い選手だからね。だから彼からタイムが奪えるなら、いつだってどこだって、僕は行くのさ」(フルーム、公式記者会見)
マイヨ・ジョーヌとマイヨ・ヴェール(と、トーマスとボドナール)が、プロトンを背負って、風の中を逃げている。エディ・メルクスやベルナール・イノーの時代なら、きっとよくある風景だったに違いない。しかし21世紀の自転車競技においては、とてつもなく非現実的な状況であり……。
「クレイジーだった。あんな風の中では、あらかじめ筋書を書くことなんて、到底不可能だったさ。ただ、驚きはしなかった。フルームは1日中、集団の先頭にしっかり位置取りしていたから。とにかく、ファンたちが楽しんでくれたら、僕は嬉しいんだ。僕自身はすごく楽しんだよ!」(サガン、ゴール後TVインタビュー)
「僕はただレースを楽しんでいる。ダウンヒルでアタックをかけたり、平地でアタックしたりというのは、ただ楽しいからやっただけ。誰かから強制されたからではなく、ただ僕の喜びであるからなんだ」(フルーム、公式記者会見)
駆け引きなんてしている暇もないほど、4選手は夢中で先頭交代を繰り返した。ただ「ゴー、ゴー、ゴー」と叫びながら、前へ前へと突進した。集団が猛スピードで追いかけてくるのを感じながら、ゴールスプリントに突入した。すでに1勝しているサガンは、本当はボドナールに、初めての区間優勝をプレゼントするつもりだったそうだ。小さく肘で合図し、2010年からずっと一緒に走ってきたチームメートに、加速をうながした。
「ボドナールを勝たせたかった。今日は信じられないような仕事をしてくれたからね。でもフルームがスプリントを切った。だからチームに勝ちを留めおくためには、僕自身が行く必要があったんだ」(サガン、ゴール後TVインタビュー)
後方のボドナールの小さなガッツポーズと共に、チームリーダーが区間2勝目を手に入れた。必死にもがいたフルームは、平地ステージで区間2位という驚異的な成績を収めた。
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