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サイクル ロードレース コラム 2016年7月15日

ツール・ド・フランス2016 第12ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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群衆のど真ん中で、フランスTV局のカメラバイクは、前に上手く進めなくなってしまった。そこに、タイム差のことだけを考えて夢中で走ってきたポート、フルーム、モレマが激突した。いつもならフェンスのある場所で、3人は地面に折り重なるようにして落車した。モレマはすぐにバイクに飛び乗り、フィニッシュを目指した。フルームは壊れたバイクを担いで走り出した。ポートはその場でバイクを調整し、3人の中では一番遅く再スタートを切った。しかもフルームやポートは、悪戦苦闘している間に、突き放したはずのライバルたちからことごとく追い抜かれてしまった。

中でもフルームは、最終的には代替自転車を待つことにしたせいか、キンタナやアダム・イエーツから1分20秒近くも遅れてフィニッシュラインへ帰ってきた。2016年ツール規則の第20条によると、ゴール手前3km以内で発生した落車、パンク、メカトラが原因で集団から遅れた場合、事故発生時に属していた集団と同じゴールタイムが与えられることになっている。ただし、このルールは、タイムトライアル区間(第13・18ステージ)と登りフィニッシュ区間(第2、9、12、17、19ステージ)は適応外。つまりフルームはマイヨ・ジョーヌ喪失どころか、総合表彰台からも弾き飛ばされてしまう……。

3人のレース終了から約1時間、審判団による協議は続けられた。会場を盛り立てるレースDJたちは、その間、「フルームはメカトラブルで遅れた」とだけ何度も繰り返した。現場には強風のため1台のテレビスクリーンも設置されておらず、現場の記者やファンはほぼパンク状態のインターネットを頼りに状況を把握するしかなかった。そして、現地時間の18時15分過ぎ、ついにフルームがマイヨ・ジョーヌ表彰式に姿を現した。

フルーム、ポート、モレマの3人には、特別にタイム救済処置が施された。事故発生時のタイム差、すなわちキンタナやイェーツの集団に対する22秒リードがそっくりそのまま、ゴールタイムに反映された。イェーツは総合2位&マイヨ・ブランの立場は変わらないが、総合での遅れは28秒から47秒に開いた。またキンタナは54秒差の総合3位。モレマは5位から4位に浮上した。

観客の心ない野次や、たくさんのフラッシュやマイクから逃げるように、フルームは何も言わずに現場を立ち去った。なにしろ翌日には、大切な個人タイムトライアルが待っている。なにより、大急ぎで、魔の山モン・ヴァントゥを逃げ出さねばならなかった。夕刻の山にはとてつもない突風が吹き荒れていた。山の上までの道沿いには、使用されなかったフェンスがあちこちに放置されていた。

この日の夜、落車に負けずステージを最後まで走り切ったゲランスが、ゴール後の検査で鎖骨を折っていたことが判明した。36歳のベテランは、大会からの棄権を発表した。革命記念日の夜、フランスはまたしても残酷なテロの舞台となった。標的となった場所は、2013年ツールでこのゲランスがマイヨ・ジョーヌを手に入れた、ニースのプロムナード・デ・ザングレだった……。ツールはまだ半ばを過ぎたばかり。全ての関係者が、全ての意味で安全にシャンゼリゼまでたどり着けるよう、ただ祈るだけだ。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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