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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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思惑通りにラスト5kmでデヘントは2人を捕らえた。残り3.5kmでは切れ味鋭いアタックも仕掛けた。しかしそう簡単には、敵を引きはがせなかった。ヒルクライマーのナバーロは一旦は遅れながらも、驚異的な粘り腰でラスト650mで戻ってきた。同じトップスポール出身のフランドル人で、2014年はチームメートでもあったパウエルスとは、最後の最後まで力比べが続いた。ラスト100mで見せた最後の猛ダッシュが、デヘントに勝利をもたらした。
2012年5月のステルヴィオ山頂は、凍えるほどに寒かった。深い霧を突き破って、デヘントは標高2758mの山頂にひとりで姿を現した。イタリア屈指の有名峠を手にしたベルギーの大逃げ職人は、この日は、何重にも連なる観客の間をかき分けて、ツールの伝説峠を勝ち取った。あの年はジロで総合3位に入った。今年は初めてのツール区間優勝で、念願の山岳ジャージを取り戻した。
「今日の勝利とステルヴィオの勝利のどちらかを選ぶのは難しい。ツールのほうが重要なレースだし、でもジロのステージは僕にとっては、キャリアで初めての大きな勝利だったんだ。それに総合3位をもたらしてくれた勝ちでもあるから」(デヘント、チーム公式HP)
こんなデヘントの区間勝利、山岳賞、敢闘賞の表彰が済んでも、さらにグルペットで1日を終えたペーター・サガンに新たなポイント賞ジャージが授与されても、マイヨ・ジョーヌとマイヨ・ブランの表彰式だけは一向に始まらなかった。原因はゴール前1200mで起こった事故。タイムを救済するか否かで、審判団と開催委員会との協議はひどく長引いたのだ。
モン・ヴァントゥの山道で、メイン集団は熾烈なバトルを繰り広げた。なにより、ついにモヴィスターが、フルームへの本格的な反撃を試みた。まずはジョーカーのアレハンドロ・バルベルデが、上り始めで飛び出した。マイヨ・ジョーヌ本人は反応せず、スカイ列車がスピードを上げて回収に向かった。その直後には、リーダーのナイロ・キンタナが、アタックを打つ番だった。しかしこれも、フルームを慌てさえるほどの威力はなかった。やはりスカイ列車が、淡々と小柄なコロンビア人に追いついた。そして再び……とキンタナは軽く動くも、試みは自らの脚で中断された。
「振り返ってみると、あまりにも早くアタックを仕掛けてしまったように感じている。強い向かい風が吹いていたし、すぐに捕まえられた上に、エネルギーを少し失ってしまった」(キンタナ、チーム公式HP)
それでも山道の最終盤、フルームがいつものように、突如として座り漕ぎでペダルを超高速回転させたときは、なんとかついて行けた。しかし、その直後、立ち漕ぎでの超高速回転をお見舞いされると、もはや何も出来なかった。キンタナは静かに後方へと遠ざかっていった。代わりに「フルームの元ナンバーワンアシスト」リッチー・ポートは、フルームの後輪から決して離れなかった。またワンテンポ遅れて、モレマが合流してきた。
キンタナからできる限りタイムを奪いたいフルームと、人生初のグランツール表彰台に向けてライバルたちを突き放したいモレマ、さらに1週目のメカトラで失ったタイムをなんとか回収したいポート。3人は共通の利益に向かって、ひたすら前へと突っ走った。ただ敵は、後方からものすごい勢いで追いかけてくるライバルや、山頂に上がれば上がるほど強くなっていく風だけではなかった。
観客だ。本来ならば山頂手前の広い道に詰めかけるはずの観客が、新たなゴール地の細道にぎゅうぎゅうに押し込まれた。しかも観客とコースを隔てるフェンスは、最低でもラスト1500mに渡って設置されるものだが、様々な要因が重なって……、この日は600mしか設置されていなかった。
「フィニッシュラインは天候状況のせいで、前日に変更された。そのせいで全てのフェンスを移動することはできなかった。しかも新たなゴール地は、風や、道幅などの要因で、いつもよりもフェンス設置距離が短くなってしまったのだ」(クリスティアン・プリュドム、ツール開催委員長、TVインタビュー)あわせて読みたい
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