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ところでデュムランは、未だ世界の頂点をつかんだことはない。世界選手権で、個人TT銅メダルを手にした経験があるだけ。だから、今年は、リオ五輪で金メダルを獲得する予定だ。この日のステージ勝者記者会見で、「君が優勝本命だよね?」と尋ねられると、デュムランはためらわず答えた。Yes, I am--!
「今日の結果を見る限り、僕が本命であることを否定はできない。ただ今回はすでに12日間レースを走った後の個人TTであり、五輪はただ1日で争われるレース。だから状況は全く違うものになるだろう。とにかく五輪まで、今の好調さキープしていかなければならない。つまりこの先は、毎日全力で走るのではなく、調子を見ながら走っていく必要がある。五輪本番でも、今日のように、あらゆる努力が報われることを祈っているよ」(デュムラン、公式記者会見)
母国開催の五輪で個人TT銅メダルを獲得したクリス・フルームが、当然のように、総合勢の中ではダントツのトップタイムを記録した。デュムランには1分03秒もの差を付けられたが、ライバルの中で最も健闘したバウク・モレマからさえ、51秒ものリードを奪ったのだ。総合でもやはり2位に浮上したモレマとは、1分47秒差をつけた。
ただ、残念なことにこの日、フルームの「スポーツに関するコメント」が述べられることはなかった。実は前日も、審判団による協議が長引いたせいで、フルームへの質疑応答は一切行われなかったのだが、今ステージはマイヨ・ジョーヌ自身が総合争いの話をすることを拒否した。
「今日のような心境で、レースのことを話すのは難しい。テロが起こった現場は自宅(モナコ)からも、トレーニングロードからも本当に近い。だから、ただただ、恐れおののいているんだ。とにかく家族を失った人たちに、愛する人を失った人たちに、心からの哀悼の意を捧げたい」(フルーム、公式記者会見)
それでも、レースの話を続けるとしよう。モレマは前日すでに、調子のよさを証明していた。フランスTV局のオートバイと激突して、フルームやリッチー・ポートと共に落車の犠牲となったが、実は総合勢の中では真っ先にフィニッシュラインを越えていた。だからこそ、タイム救済処置は、オランダ人にとっては全く歓迎すべき対応ではなかったようなのだが……。それでも気持ちを切り替えて、この日のモレマは、「人生最高」のタイムトライアルを実現させた。
「風が多かった。でも、僕にとっては、有利な状況だったんだ。だって僕はオランダ人で、強風の中で走るのに慣れているから!」(モレマ、ゴール後インタビュー)
7kmの上り坂の果ての第1中間計測では、総合勢の中ではリッチー・ポートの14分26秒、フルームの14分33秒に次ぐ3位のタイム14分47秒で駆け抜けた。平地の果ての第2計測地点では、フルームとの差こそ40秒に開かれたが、他のライバルからはことごとく先んじた。そしてフィニッシュ地では、区間6位という好成績を上げ、1分47秒差の総合2位に浮上した。
前日あわやマイヨ・ジョーヌか……という立場にあったアダム・イェーツは、2分45秒差の総合3位に一歩後退した。またナイロ・キンタナはフルームからわずか37.5kmの道のりで2分05秒を失った。総合では2分59秒差の4位。ちなみに2015年のキンタナは第14ステージ終了後にフルームに3分10秒差をつけられたが、最終的には1分12秒差にまで追いつめている。
「ほぼ3分差で、早くも総合優勝が遠ざかってしまった。今の僕が願うのは、ただこの先、脚の調子が良くなっていくこと。山はまだまだたくさん残っているから、これからも挑戦は続けていく。とにかく、脚の調子次第だね」(キンタナ、ゴール後TVインタビュー)
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