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サイクル ロードレース コラム 2016年7月16日

ツール・ド・フランス2016 第13ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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谷間を吹き抜ける風は、ラベンダーの香りを含んでいた。アルデッシュの大いなる自然と、青い空は、今日もいつもどおり美しかった。

ただし、この日ばかりは、誰ひとりとして、ツール・ド・フランスの喜びを心から感じることはできなかった。昨夜遅く、南フランスのニースが、テロの犠牲となった。パリ〜ニースの伝統的フィニッシュ地、プロムナード・デ・ザングレでの惨事に、自転車界は大きな衝撃を受けた。11月以来続くフランスの非常事態宣言はさらに3か月延長され、当然ながら、ツール・ド・フランスの続行さえも疑問視された。開催委員会は警察、憲兵、国家憲兵隊治安介入部隊、地元自治体と緊急会議を開き、政府の意見を仰いだ。

「レースは続けられなければならない。我々の生き方を変えようと試みる者たちのプレッシャーに、負けてはならないのだ」(クリスティアン・プリュドム、大会開催委員長、スタート前コメント)

キャラバン隊は楽しげな音楽は鳴らさずに、静かにコースを巡った。開催スタッフはみな黒い腕章をつけ、スタート地では1分間の黙祷が行われた。そして10時05分、事件から約12時間後に、個人タイムトライアルの第一走者が37.5kmのコースに走り出した。

選手たちにとっては、精神的に厳しく、なにより肉体的にとびきり難しい一日だった。コースにちりばめられた起伏に関しては、あらかじめ心の準備ができていたはずだ。しかし、すでに2日間たっぷり苦しめられてきた風に--1日目は平坦で、2日目は山岳で--、まさか再び苦しめられることになるとは!

「難しかったです。風が強かった……。特に昨日は、ずっと風の中で引いていたので、体力的に辛かったですね。しかも明日もまた強風の予報で。きっとまた、とんでもないレースが、繰り広げられることでしょう」(新城幸也、ゴール後インタビュー)

疲労の色は濃いものの、ほっとした表情の新城は、幸いにも13時過ぎにはホテルへの帰途に就いた。午後ゆっくりと体を休めて、翌日の風レースに備えることができそうだ。

この風と、起伏は、いわゆる「タイムトライアル世界王者」たちをも大いに苦しめた。個人TTで3度、チームTTで2度の世界王座に輝いたトニー・マルティンは、9位に終わった。アルカンシェル4回+五輪金メダル1回のファビアン・カンチェラーラは23位。現役世界チャンピオンのヴァシル・キリエンカに至っては、首位から7分33秒遅れの120位に沈んだ。ただ忘れてはならないのは、3人全員が、前日は総合系リーダーのために献身的に牽引を行ったこと。

一方で、オランダTTチャンピオンジャージを身にまとうトム・デュムランが、極めて難しいコースを完璧に攻略してみせた。ほんの5日前に、雹の降り続く標高2240mの山頂を、勇敢なる独走で制したばかりだというのに……。この日は全187人中唯一の50分台を叩き出し(50分15秒14)、あらゆる選手を退けて最強の強者となった。

「このステージはツール開幕時から狙っていたんだ。数日前から、TTのことだけに集中してきた。ただ、今朝目が覚めて、ひどいニュースを聞いた途端に固まってしまった。レースのことなんか、まるで考えられなくなってしまった。でも、ステージが予定通り行われることが決定されて、改めて集中し直した。今はふたつの相反する思いを抱いている。目標通りに区間を勝つことができて嬉しい気持ちと、ものすごく悲しい気持ちと」(デュムラン、公式記者会見)

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