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ピレネーを終え、モン・ヴァントゥを越えても、マーク・カヴェンディッシュの勢いは止まらなかった。古なじみの最終発射台マーク・レンショーは途中リタイアしたけれど、代わりにライバルのマルセル・キッテルの後輪に滑り込んだ。そのキッテルからは、「スプリントラインを変えた」と抗議も受けたが……。何の問題もなく、カヴが今大会4勝目を手に入れた。ツール・ド・フランスにおける通算ステージ勝利も、ついに30勝に届いた!
朝のスタート地は、ゆるりとした雰囲気が漂っていた。連日の暴風に、選手たちが少々疲れ気味だったせいだろうか。それとも山だらけの最終週に突入する前に、ほっとしたひと時を味わいたかったのだろうか。ヴィラージュ(スタート地のスポンサーブースゾーン)にはたくさんの選手たちが、リラックスしにやってきた。コーヒーを飲んだり、お菓子を食べたり、ただおしゃべりしたり。
2日前にニースで起こったテロの犠牲者に、1分間の黙祷を捧げた後、音楽のないスタート地をプロトンは走り出した。その後もスローモードは継続された。北へとほぼ真っすぐに上がっていく道に、ひどく強い向かい風が吹き付けていたせいでもある。25km走っても、アタックは一切かからなかった。
「こんな日だから、自分から逃げに乗ろうとう選手など、まるでいなかった。でも僕は何もせず、ただプロトン内で過ごしたくなんてなかった。特に(ティボ)ピノがリタイアっしたから、チームの士気を立て直すためにも、何かしたかったんだ。だから逃げを打った。幸いにも、3選手が僕についてきてくれた」(ジェレミー・ロワ、ゴール後ミックスゾーンインタビュー)
こうして2011年スーパー敢闘賞のロワが、28km地点で、真っ先にアタックをかけた。チェザーレ・ベネデッティ、アレックス・ハウズ、マルティン・エルミガーが試みに賛同した。こんな勇敢な4人を見送った後も、メイン集団はあいかわらずゆっくりとペダルを回した。序盤3時間の走行平均時速は33.5kmと、開催委員会が予想した時速40〜44kmを大幅に下回った。
「今朝は疲れを感じていた。おそらく総合系の選手たちも、みんなぐったりしていたと思うよ。辛い数日間を終えた後だったから、静かに過ごしたかった。特に明日からは難しいステージが待っているし……。体調を回復させ、リラックスするためには、こんな1日はウェルカムだった!」(フルーム、公式記者会見)
沿道の声援は変わらず、にぎやかにツールを盛り立てた。フランス選手の今ツール初勝利を待ちわびるフランスのファンたちは、特にフランス人のロワを贔屓した。またリヨンのグランゼコールでエンジニア免状(フランス最難関資格のひとつ)を取得したロワにとって、この日のステージ地はいわゆる第2の故郷でもあった。
「特に最終盤は、道を隅々まで知っていたから。それに、自分のために自由に走れるこんな機会を、最大限に利用する手はなかった」(ロワ、ゴール後TVインタビュー)
タイム差は最大4分45秒にまでしか開かなかった。スピードは速くなかったけれど、それでも、メイン集団のスプリンターチームは逃げ切りを許すつもりもなかった。なにしろこの日を終えたら、残すチャンスは第16ステージのベルヌと、最終日シャンゼリゼの2回しかない。だから、じわり、じわり、と4人との距離を縮めていった。
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