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「下りの途中に、片方のコンタクトレンズが外れたんだ。つけ直そうとしたけれど、戦いは緊迫していたし、スピードも速かった。だから結局はつけ直せなかった。片方のレンズだけで走り続けなきゃならなかった。片目は良く見えて、もう片目はまるでよく見えないから、難しかったんだ。僕にできることは何もなかった」(ザカリン、チーム公式リリース)
そしてマイカとパンタノは2人になった。最終峠1級ラセ・デュ・グラン・コロンビエの上りで、マイカは力強いアタックを決める。先頭通過10ptを獲得するためであり、もちろん、区間勝利をつかみ取るためでもあった。しかし、またしても下りで--超級グラン・コロンビエからの下りの下半分がそのまま使用された--、パンタノは追いついてきた。
「山岳ジャージとステージ優勝を両方獲りにいくのは、決して簡単なことではない。それでも全てが欲しかった。もしもゴールが山頂だったら、結果は違っていただろう。でも下りでは、あまりリスクを冒したくなかった。4日前に落車したせいで、腕を痛めていたから。未だに道路の振動が腕に響いて痛いんだ」(マイカ、ミックスゾーンインタビュー)
ゴールは下った先だった。だから下りで2度追いついてきたパンタノに、勝利の女神は微笑んだ。スプリント力でも一歩上回り、本人にとっては人生初めてのグランツール区間勝利をつかみ取った。ちなみに、ほんの1か月ほど前に、ツール・ド・スイスでプロ初勝利(欧州初勝利)を手に入れたばかり。
「去年の僕はプロとしての走り方を学んだ。今年は確認の年だった。ツール・ド・スイスを勝った後でさえ、今日の勝利をつかむために、さらに成長を遂げたのさ」(パンタノ、公式記者会見)
ところで所属チームのIAMは、ジロ開催中に「今シーズ末での解散」を発表したものの、皮肉にもその2日後にチーム創設以来初めてのグランツール勝利を祝っている。どうやらその後、オーナーのミシェル・テタズ氏は、改めて「来季」に向けたサブスポンサーを探し始めているらしい。偶然か必然か、翌日第16ステージから3日間、ツール一行はIAMの登録国スイスで過ごす。パンタノの快挙が、もしかしたら、何か明るい話題につながるだろうか。
2位に終わったマイカは、この日だけで山岳ポイント50ptを荒稼ぎ。当然、念願の山岳ジャージに袖を通し、敢闘の証「赤いゼッケン」もご褒美に授与された。
後方のレースで、最初に動いたのはアスタナだった。スカイが制御するメインプロトンは、逃げに9分近いリードを許し、ただ淡々とリズムを刻んていた。ところが超級グラン・コロンビエにさしかかると、突如として、水色のカザフスタン軍が加速に転じた。しかも、下りでは、前に逃げていたニーバリとタネル・カンゲルトと合流し、隊列の強化を図った。メイン集団は一気に小さくそぎ落とされた。
そして、続く1級の「つづら折り」グラン・コロンビエで、満を持してリーダーのファビオ・アルがアタックを試みた。一度、二度、と加速を畳みかけた。
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