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サイクル ロードレース コラム 2016年7月23日

ツール・ド・フランス2016 第19ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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幸運なことに、ポートは落車後すぐに、チームメート3人の力強いサポートを受けた。その中の1人が、逃げに乗っていた選手だったから、用意周到さが功を奏したことになる。メイン集団は相変わらずアスタナが高速制御を続け、さらにはオリカ・バイクエクスチェンジもここぞとばかり加速に乗り出したが、最終峠に入る前にはしっかり集団復帰を果たした。

またフルームの周りには、いつも通りに、力強いアシストたちが控えていた。だから落車現場では、すぐさまゲラント・トーマスが自転車を差し出した。4人のアシストが追走役を務めた。もちろん、いつものような、「高速」牽引ではなかった。あちこちを痛めたフルームを気遣い、速すぎず、遅すぎず。メイン集団復帰後も、マイヨ・ジョーヌが危険な目に合わぬように……、常にアシストたちは前方後方に目を配った。

「ひどいケガがなくて幸いだった。単なる擦り傷と、ちょっと膝を打っただけ。チームカーがかなり後方にいることを把握していたから、トーマスの自転車を借りた。最後までチームメートに頼ることができて、本当に助かった。全員が素晴らしい仕事をしてくれた」(フルーム、表彰台裏インタビュー)

モレマに関しても、アイマル・スベルディアとピーター・ステティーナが待っていた。しかし、少し先で、3人揃って落車に巻き込まれた。もう少し先の曲がり角では、スベルディアがコースアウトしていった。ステティーナ1人では、最終峠の麓までが限界だった。最終10kmの山道を、モレマは孤独に上るしかなかった。

ところで、落車する直前のモレマは、メイン集団の前から2番目を走っていた。Ag2rのミカエル・シェレルが猛烈なるダウンヒルを開始した、そのすぐ背後に控えていたのだ。そしてトレックのリーダーは落車し、Ag2rのリーダーはあらゆる混乱を切り抜けた。なにより、このカオスを、上手く利用した。ゴール前13km、シェレルとバルデは、前方へと勢いよく飛び出した!

「何も計画なんてなかった。本能に任せたのさ。僕らがお見せしたいのは、自転車レースなんだ。つまりひらめきは、稲妻のように訪れる。『今だ』と思った瞬間に、行かなきゃならない。シェレルが僕に耳打ちしてくれて、すぐに僕も、彼に同意した。そこからの僕らは、それこそ全力を尽くしたさ」(バルデ、公式記者会見)

麓まで全力で引いたシェレルから、総合5位のバルデが勢いよく発射された。先を行くコスタにはすぐに合流した。できる限り、協力体制を心がけた。しかし、後方からのプレッシャーは徐々に増していった。最初は1分以上あったリードも、少しずつ減っていった。だから残り3.2km、バルデはもう一度だけ加速を切った。総合ライバルたちの追い上げを、妨げるために。

「過去のミスから教訓を得ていたんだ。ドーフィネでは同じような状況で失敗を犯した。だから今日は自分を律し続けた。総合のために全力を尽くすんだ、区間2位で終わったとしても大したことじゃない、二兎を追うな、って自分に言い聞かせた」(バルデ、公式記者会見)

ところが、この加速で、スタート直後から逃げていたコスタはあっさり脱落した。しかも、この加速が、バルデ自身に自信を与えた。自分にはまだ十分な脚が残っている、だから「後ろからの追い上げに、抵抗できるかもしれない」と。

フランスが不安から解放される時がやってきた。1903年に創設された世界最大の自転車レースで、フランス人がひとつも区間優勝を取れなかったのは、1926年と1999年の史上2大会しかない。しかしバルデのおかげで、なんとか史上3度目の屈辱を、味わうことなく済んだ。雨の上がった山頂で、感激に浸る25歳の若者へ、惜しみないブラボーの声が飛んだ。総合争いの真っ最中だというのに、フィニッシュラインまで全力で駆け抜けなかったことに対しては、ちょっとだけ記者陣から疑問の声も上がったけれど。

「山頂では勝利を満喫したかった。レースをつまらなくする『計算』ばかりしていたくはないんだ。このツールを生き延びるためには、僕にとって、こういった気持ちの部分も大切だった」(バルデ、公式記者会見)

それでもバルデは、区間2位以下に23秒のリード+ボーナスタイム10秒を、きっちりと稼ぎ出した。直接的なライバルたちからは、ことごとく33秒以上のタイムを奪い取った。なにより総合5位から、表彰台の2番目の位置に、一気に駆け上がったのだ。

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