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サイクル ロードレース コラム 2016年7月24日

ツール・ド・フランス2016 第20ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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自らの名誉を回復するために、最終峠で、モレマは驚きのアタックに打ってでた。「戦わずして、舞台から立ち去りたくない」と、強い意地を見せた。ほんの数キロ先でスカイ列車に静かに飲み込まれ、最終的には総合11位に後退してしまったけれど。代わりに前日の段階で総合11位だったホアキン・ロドリゲスが、飛び出しを成功させた。人生最後のツール・ド・フランスの、最後の山岳ステージの、最後の20kmで、総合7位の座をつかみ取った。

アル、モレマ、ロドリゲス、そして逃げの果てに総合10位にアップしたクロイツィゲルを除く総合上位勢は、静かにまとまって最終峠からの下りを終えた。フィニッシュのほんの数百メートル前に、ようやく小さな競り合いが見られたが、最大でも6秒の差しか生まれなかった。わずか1分6秒差でひしめいていた総合2位から5位も、たったの16秒差しかなかった総合2位と3位も、つまり順位の変動は一切なかった。

すなわちクリス・フルームは、何の問題もなく、パリ前夜のステージを終えた。3週間裏表なく献身的に支え続けたワウテル・ポエルス、ゲラント・トーマス、セルジオルイス・エナオモントーヤ、ミケル・ニエベに囲まれて。ラインを越えた瞬間に、緊張の表情が緩んだ。マイヨ・ジョーヌの顔全体に、柔らかい笑みが広がった。

「レースの間はストレスを抱えていたから、ラインを越えた瞬間にものすごい感動が襲ってきた。しかもチームメートたちと一緒に終えられたことで、安心感がいっぱいだったんだ」(フルーム、公式記者会見)

モルズィーヌのプレスルームでは、大勢詰めかけた記者の目の前で、人生3度目のマイヨ・ジョーヌ優勝記者会見へと臨んだ。

「3度ツールを勝って、パリに3度、マイヨ・ジョーヌでたどり着いた。これはすべての自転車選手にとっての夢なんだ。2017年もまた、勝つために、ツールに戻ってくる。願わくば、あと5、6年は、ツールの優勝争いに加わり続けたいな」(フルーム、公式記者会見)

翌日、2016年ツール一行は、パリに帰り着く。ご存知の通り、昨年以来、フランスはテロの脅威にさらされてきた。シャンゼリゼのツール通過も、一時は中止がまことしやかに噂されたこともあった。実際、その他たくさんのイベントは、中止に追い込まれている。しかしフランスにとっては単なるスポーツイベントの枠を超えた、歴史的財産でもあるツール・ド・フランスだけは、絶対に、脅威に屈するわけにはいかないのだ。

「レースを取り巻く雰囲気は最高だった。フランスのファンたちが、このレースを素晴らしいものに仕立て上げてくれた。しかも、ニースで辛い事件が起こった後も、レースは続けられた。これが象徴しているのは、人生は続くのだ、ということ。テロごときが人々の暮らしをストップすることなど、絶対にできないのだ、ということだ」(フルーム、公式記者会見)

シャンゼリゼ周辺には例年以上の厳重警戒態勢が敷かれ、残念ながらレース後のパレードは中止となったけれど……、1975年以来41年間変わることなく、世界で一番美しい大通りで、ツールは華やかなフィナーレを迎える。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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