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サガンの監視から解放された逃げ集団からは、デヘントやローラン、コスタが次々と飛び出しを試みた。1級からの濡れた下りでは、パンタノとアラフィリップが怖いもの知らずのように飛び出した。
しかし、これは、最後から2番目の下りに過ぎない。真の下り巧者ならは、今大会最後のダウンヒルで仕掛けるべきだった。それなのに、若きアラフィリップは、上りでパンタノを引き離そうと無理に努力しすぎた。だからニーバリが、最終峠の中盤で追いついてくると、もはや抵抗する力が残っていなかった。その直後に、密かに後方から近付いてきたイサギーレにも、あえなく追い抜かれた。ただ上手く力を制御したパンタノだけが、新たに台頭してきた2人にしがみつくと、最後の下りへと挑みかかった。
フィニッシュ地のスピーカーは、「プロトン屈指の名ダウンヒラー」であるニーバリが、伝家の宝刀を抜くに違いないと連呼していた。今大会ですっかり「下り巧者」の称号を定着させたパンタノの、新たな下りアタックも、大いに期待された。しかし、大粒の雨の下で、真っ先にイニシアチブを奪ったのはイサギーレだった。
「ニーバリとパンタノがダウンヒル巧者であることは分かっていた。だから、下りの前に、気合を入れ直す必要があった。単独先頭でフィニッシュしようと思ったら、絶対に下りには先頭で突入しなきゃならなかったし、全力で坂を下らなきゃなかった。怖くはなかった。怖がったら最後、転んでしまうと思ったから」(イサギーレ、公式記者会見)
イサギーレの読みはズバリ当たった。先頭で下りに入ったあと、それこそフィニッシュラインまで全速力で駆け抜けた。前日の(フルームからの)もらい落車の記憶が生々しいニーバリや、滑る路面で膨らみすぎて沿道の草にはみ出したパンタノに、決して先行されることはなかった。7kmの勇敢なダウンヒルと、2kmのフラットパートを終えると、生まれて初めての、感動的なツール区間優勝が待っていた。
「モヴィスター チームとして、ツールを勝ちたかった。でもフルームは強すぎた。でも僕らチームの最終成績は、悪くないと思うよ。ナイロの総合3位に、チーム総合首位に、そして今ステージの優勝!」(イサギーレ、公式記者会見)
後方のメイン集団は、カオスだった前日とは極めて対照的に、チーム スカイとマイヨ・ジョーヌが慌てさせれる場面は一度もなかった。もちろんステージ半ばでは、アスタナ プロチームが隊列を組み上げた。ファビオ・アルが総合6位からの逆転表彰台乗りを目論み、アシスト総出で牽引を行ったが……、大先輩ニーバリの分析によると「初めてのツールで苦労」したようだ。最終峠でメインプロトンから脱落すると、総合13位へと順位を落とした。
また前日の落車で2位から一気に10位まで陥落したバウク・モレマは、この日は気力が完全に途切れていた。ステージの早い段階で、マイヨ・ジョーヌ集団から置き去りにされてしまう。
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