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サイクル ロードレース コラム 2016年8月30日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016 第10ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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後方では、モヴィスターが猛スピードで追い上げていた。ここまでの10日間、逃げにも乗らず、平地スプリントにも交わらず、黙々とリーダーのためだけに尽くしてきたアシストたちが、またしても高速リズムを刻んだ。あまりにも暴力的な速さだったから、ゴール前10km、フルームが後方へと置き去りにされてしまったほど!

8月末のフルームは、7月とはまるで異なる走り方を採用している。圧倒的なチーム力で、完全にレースを支配下に治めたツールとは違う。スペインの山では、必ずといっていいほど一旦遅れる。周りがどれほど急ごうとも、ひたすらサイクルコンピュータのワット数を見ながら、ペースを崩さずに走り続ける。そして、山もいよいよ最終盤にさしかかったころ、突如として前線に舞い戻る。今年だけでなく、過去の参加時も同じだった。だから、ライバルたちも、理解していたはずなのだ。ただ、今回のフルームは、50秒近くも遅れを取った。もしかしたら、いよいよ……。

ライバルたちは先を急いだ。コンタドールが攻撃の口火を切った。すぐにキンタナが反応した。やはり7月とはまるで異なる積極性を披露しつつ、カウンターアタックをお見舞いした。力強くペダルを踏み込み、しかも長く執拗な加速だった。コロンビア人の後輪に、すかさず貼り付けたのは3大ツール王者のスペイン人だけ。エスケープの残党の間を縫いながら、そのまま2人は敢然と完全と突き進んだ。

しかし、いつしか、ミケーレ・スカルポーニやアレハンドロ・バルベルデが、じりじりと距離を縮めてきた。なにより現役マイヨ・ジョーヌが、ついに、はるか遠くで加速装置のスイッチを入れた。

山頂まで3.5km。キンタナはさらに一段スピードを上げた。誰からも追いつかれないために。すべてを完全に振り払うために。コンタドールも得意のダンシングで抵抗したが、長く、執拗な加速で、ついにサドルに腰を下ろした。ゴール前6.5kmから単独先頭で逃げ続けていたヘーシンクは、残り2.5㎞で無情に追い抜かれた。キンタナが勝利への独走へと飛び立った。

ライバルたちからできる限りタイムを稼ぐため、フィニッシュラインギリギリまでペダルを踏み続けた。いわゆる勝利のポーズをとっている暇などなく、ラインを越えた直後に、慌てて投げキッスした。2013年ツール区間1勝、2014年ジロ区間2勝のコロンビア人にとって、初めてのブエルタ区間勝利だった。記念すべき史上20回目のコバドンガステージで、この山を制した4人目のコロンビア人となり、もちろん1日着用しただけで失ったマイヨ・ロホをわずか1日で取り戻した。

キンタナがボーナスタイム10秒を手にした背後では、フルームの高速ペダルが炸裂した。エステバン・チャベスを追い落とした。アレハンドロ・バルベルデを捕らえ、背中にひっつけて先を急いだ。ゴール前2.5㎞では、とうとうコンタドールとスカルポールに並んだ。しかも、くるくると速いリズムで畳み掛けると、キンタナとのランデヴーで力を使い果たしたコンタドールを、完全に置き去りにした。最後はヘーシンクとフライレを巻き込んで山頂スプリントさえ挑み、区間3位で4秒のボーナスタイムを懐に入れた。キンタナからは25秒遅れのゴールだった。

バルベルデとスカルポーニが28秒差で続き、チャベスは1分02秒差で1日を終えた。コンタドールはラスト3.5kmで、キンタナから1分05秒を失った。

総合では2位バルベルデが57秒差、3位フルームが58秒差と、キンタナからすでに1分近い遅れを喫したことになる。4位以下に至っては、もはや2分以上の距離を開かれてしまった(4位チャベス2分09秒、5位コンタドール2分45秒)。

2016年ブエルタもほぼ折り返し地点に差し掛かった。マイヨ・ロホを巡る戦いは、休息日明けのピレネー連戦でどう動くのか。フライレがついにその手に取り戻した山岳ジャージの行方も、まだまだ分からない。

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