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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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2013年ツールの第9ステージで、クリス・フルームは同じように「丸裸」状態にされたことがある。あの日は実に140km以上も、孤独な戦いを強いられた。最終的にはマイヨ・ジョーヌの座が揺らぐことはなく、ただ「トイレ休憩が取れなかった」ことを本人は笑い話にしたが……。
孤立したクリス・フルームは、自らは決して先頭で追走しようとはしなかった。やむなくオリカ・バイクエクスチェンジが加速に乗り出した。時おりアスタナ プロチームも、ミケーレ・スカルポーニの総合9位を守ろうと、牽引に手を貸した。
フライレとエリッソンドのポイント収集合戦は、序盤2峠はスペイン人に軍配が上がった。それ以外の時は、14選手は見事なまでに協力しあって、前を目指し続けた。もちろんナイロ・キンタナとアルベルト・コンタドールのチームメート2人×2は、だれよりも長い間、先頭牽引を担当した。最終峠へとつながる長い長い山道が始まると、そこまで力を尽くしてきたアシストたちは、順番に脱落していった。
ゴール前8km、後方とのタイム差は2分。ついにサポート役を全員失ったナイロ・キンタナは、先頭を引き始めた。腹をくくり、自らのペースで山を登り始めた。なにしろ第19ステージの個人タイムトライアルの前に、総合2位クリス・フルームから、1秒でも多くのタイムを奪い取らねばならない。もちろんマイヨ・ロホの刻む本気のリズムに、ついていける者などそう多くはなかった。ラスト3kmで勾配が一気に跳ね上がると、ずるずると逃げの仲間たちは滑り落ちていき……、ただブランビッラとアルベルト・コンタドールだけが、後輪に張り付いた。
同じ頃、クリス・フルームにも、ついに先頭に立たねばならぬ時がやってきた。集団内で小さなアタックが相次ぎ、さらにアレハンドロ・バルベルデが、様子見とばかりに加速を試みた。まったく動けない白い複合賞ジャージは、それから無理やり最前列に押し出された。ほんの2kmほど先頭を引いた。しかし、耐え切れず、自ら後方へと引き下がっていった。これが合図だった。多くの選手たちが、衰弱した英国人を置き去りにして、飛び出していった。
ナイロ・キンタナは山頂まで先頭を引っ張り抜いた。あまりにスピードアップを繰り返すものだから、ラスト1.5kmで、アルベルト・コンタドールさえついていけなくなった。ゴール前200mまで加速を止めなかった。ただフィニッシュライン直前で、後輪から飛び出したイタリア人に優勝をさらい取られた。
この春のジロで初めてのグランツール区間勝利を手に入れ、マリア・ローザも2日間着用したブランビッラが、大躍進のシーズンを改めて印象づけた。エティクス・クイックステップにとっては今大会区間4勝目で、一緒に逃げたチームメート、ダクルズが総合9位に浮上するという嬉しい報告も付いてきた。ちなみにフォルモロも総合8位へとジャンプアップ。また山頂スプリントでフライレに対抗できない代わりに、最後まで粘るのが作戦、というエリッソンドは区間4位で山岳ポイント2ptをしまい込み、きっちり青玉ジャージも守り切った。
ナイロ・キンタナはもちろん、区間2位のボーナスタイム6秒はきっちりと押さえた。しかも「ペダル」では共に逃げたアルベルト・コンタドールを34秒、最後にクリス・フルームを捨てて飛び出したチャベスを1分53秒突き放した。疲弊しきったクリス・フルームからは2分40秒をむしりとり、マイヨ・ロホの望み通り、総合では54秒から3分37秒へと大きく差を開いた。3位チャベスも2分01秒から3分57秒遅れと後退した。
クレイジーなステージの脚本家であり、主役の1人であり、間違いなく英雄だったアルベルト・コンタドールは、念願のステージ勝利には手が届かなかった。しかし、勇敢な努力は、報われた。総合では6位から4位へと返り咲いた。しかも3位チャベスとの差はわずか5秒、2位クリス・フルームとの差は27秒と、表彰台へ一気に近づいた。たしかに、マイヨ・ロホまでのタイム差は、4分02秒と果てしなく大きい。ちなみに2016年ジロで、ヴィンチェンツォ・ニーバリがひっくり返したタイム差は、4分43秒差だった。
短くて過酷なステージを、出走した164人全員が最後まで走り切った。ただし31分24秒の制限時間以内にゴールできたのは71人だけ。なんと93選手が、制限時間アウトで、大会を強制的に終了させられるべきところだった。たとえばチーム スカイは、クリス・フルーム以外、全員失格……!幸いにも、大会ルール第11条の「特殊な状況の場合は、審判団は大会開催主の同意のもと、制限時間を見直すことができる」が適応された。われらが別府 史之選手や新城 幸也選手も、無事に救われた。
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