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サイクル ロードレース コラム 2016年9月8日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016 第17ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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2度目の休息日が明け、いよいよマドリード到着が近づいてきた。年末には4年間の短い歴史を閉じ、あと4日後にはグランツールから永遠にさよならするイアム サイクリングが、今季4つ目のグランツール勝利を祝った。スイスチームをリーダーとして3年間支えてきたマティアス・フランクが、自身初めてのグランツールの栄光を手に入れた。まるで常軌を逸したような激勾配で、総合上位4人はギリギリの攻防を繰り広げた。結果は4者引き分けに終わった。

のんびりと海辺で休息し、元気を取り戻した一行は、猛スピードで走り始めた。特に終わりに向けて、そろそろ帳尻合わせが必要な者たちは、熾烈な戦いを厭わなかった。

たとえば青玉ジャージを狙う面々は、スタートから20km地点の2級峠へ向けてこぞって加速した。山岳賞首位のケニー・エリッソンドが苦しむ中、現在2位にして、1年前の山岳賞オマール・フライレが、首位通過をかすめとった。今区間のポイント収集合戦はこれにて打ち止められたが、2人の差はわずか3pt。第18区間で最大5pt、第20区間で最大35ptが収集可能なことを考えると、いまだ決着には程遠い。

この日も含めて、区間勝利のチャンスは、5回しか残っていなかった。しかもタイムトライアル(第19区間)とスプリント(第21区間)の存在を考えると、実質的な機会は3回。だから、大多数の選手にとって、激坂フィニッシュが自分向きか否か……なんて悩んでいる余裕はなかった。猛烈なアタック合戦は続いた。45kmほど走って、ようやく、大きなひとかたまりが飛び出した。最終的に28人がエスケープに乗った。

総合首位ナイロ・キンタナ擁するモヴィスター チーム、2位クリス・フルームのチーム スカイ、3位エステバン・チャベスのオリカ・バイクエクスチェンジが、それぞれ2人ずつアシストを送り込んでいた。4位アルベルト・コンタドールのティンコフからも1人。ちなみに最も多数派だったのはイアム サイクリングの3人だ。そして、モヴィスター チームは、どうやら逃げ切りを望んでいた。うっかり吸収して、総合ライバルたち(というかクリス・フルーム)にボーナスタイムを取られたくはなかったし、うっかり近づきすぎて、チーム スカイやオリカ・バイクエクスチェンジのアシストたちに前方待機→アシストの機会も与えたくはなかった。だからスペインチームは淡々とリズムを刻みつつ、ゴール前70kmで最大7分45秒ものタイム差を与えた。

これにしびれを切らしたのが、ビーエムシー レーシングチームだった。チーム総合で現在首位につけるスイス資本のアメリカ籍チームは、逃げ集団に1人しか送り込めなかった。つまり、このまま大差で逃げ切りを許してしまうと、前に2人抱えるチーム総合2位モヴィスター チームに、接近されてしまう可能性がある(チーム総合順位は、各ステージ単位でのチーム内上位3人のゴールタイム総計が用いられる)。だから、できる限り、タイム差を縮めなければならない。

こうしてビーエムシー レーシングチームの数選手が集団前方に駆け上がると、猛烈な牽引作業に乗り出した。ちなみに、前方も大人数だったせいか、タイム差は思うようには縮まらなかった。この日だけでモヴィスター チームから5分近く縮められたが(現在19分30秒差)、チーム総合首位の座は守り切っている。

逃げ切りを許された28人の集団は、残り30kmで早くも分裂した。ダリオ・カタルドの加速に、マティアス・フランクが呼応すると、あっさりと飛び出しは決まった。そのまま30秒ほどのタイム差をキープしながら、全長3.8kmの最終峠へと突入した。

ブエルタ初登場のマス・デ・ラ・コスタを登り始めた途端に、2人の両足には、12.5%の難勾配が襲いかかった。しかも、この勾配は、極めて簡単な部類でしかない。むしろ延々と20%近い勾配が続く道で、誰もが、文字通り一寸ずつしか前に進めない状況だった。

極限だった。それでもゴール前2.7km、2015年ツール総合8位のフランクが、持てる力をすべてペダルに踏み込んだ。2012年ブエルタで、25%ゾーンを含む超激坂クイトゥ・ネグルを制したイタリア人を、ほんの少しだけれど、突き放すことに成功した。そのまま2人の距離は、じわり、じわり、と広がっていく。

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