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サイクル ロードレース コラム 2016年9月11日

ブエルタ・ア・エスパーニャ2016 第20ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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2016年ブエルタ最後の峠が、あらゆる戦いの決着を見届けるべく、そびえ立っていた。ルイスレオン・サンチェスとモラールは先頭で突入した。約1分半後にエリッソンドを含む第2集団が襲いかかった。6分後にはハウスンに引かれたチャベスが、そして7分50秒後にはキンタナ、フルーム、コンタドールを含むメイン集団が上り始めた。

フランス一周では過去区間4勝を上げながら、祖国のグランツールでの最高成績が区間2位……というルイスレオン・サンチェスは、100km近く一緒に走ってきたモラールを振り払い、残り12kmで独走を始めた。しかし、栄光への夢は、ラスト4kmで砕け散った。後方から飛び出してきたダルウィン・アタプマに、あえなく抜き去られてしまった。

区間5位以内でフィニッシュしさえすれば、青玉を確定できるはずのエリッソンドは、いつしか集団内から姿を消した。チャベスに抜かれ、総合上位勢に軒並み先を行かれ、最終的には区間22位でゴールした。3度の奮闘で疲れ果て、あと1pt届かなかった。フライレの手に2年連続で山岳賞が渡った。

今大会前半に4日間マイヨ・ロホを着たアタプマは、軽やかなダンシングで上り続けた。ただ背後からは、上半身をひどく折り曲げたラトゥールが、じわじわと追い上げてきた。自身がツール・ド・スイス第3ステージで区間勝利を上げた日に、リーダージャージを取ったのがこの若きフランス人だった。

しかも山頂まで2.5km地点で合流を果たすと、22歳の若者は繰り返し加速を試みた。背後からファビオ・フェリーネが差を詰めてきていたせいだった。片手では足りないくらいのスピードアップを、執拗に行った。ただ逆にラスト500mで、アタプマにカウンターアタックを打たれ、一度は脱落してしまう。……しかし、執念深い若者は、大ギアを回して300m地点で戻ってきた。そのまま全力を振り絞ると、ついにラスト50mで、コロンビア人のやる気をへし折った。

第4ステージにアタプマを蹴散らしたリリアン・カルメジャーヌと同じく、プロ2年生のラトゥールもまた、初めてのグランツールで初めての区間勝利をつかみとった。将来はグランツールで大暴れする逸材と、母国フランスでは大いに注目を浴びる。

フェリーネは3位に飛び込む衝撃を演出し、緑ジャージを手に入れた。ただし最終日に中間4pt+ゴール25pt=29pt獲得可能だから、いまだポイント賞候補は5人存在する。特に7pt差につけるバルベルデが、5年連続7回目のマドリード表彰式参加を狙わないわけがない。

自己を犠牲にしてハウスンが力の限り働いてくれたあと、最後の18kmほどを、チャベスは1人で登った。ただし、後方でも、遠隔チーム支援は続いた。ハウスンと同じく逃げていたユーリ・トロフィモフが、ようやくコンタドール集団まで下がり、チャベスとの距離を詰めようと必死に牽引作業を始めた直後だ。たった1人のアシストを消耗させるために、総合6位のサイモン・イェーツが、囮アタックを打ち始めたのだ。トロフィモフも執念を見せるが、幾度となく繰り返される攻撃に、ゴール手前10kmで力尽きた。

むしろコンタドール自身が加速を切ったせいでもあった。チャベスとのタイム差はすでに2分近くまで広がり、つまり総合3位の座を奪われていた。しかし、あくまで「危険人物」の動きを、キンタナが見逃してはくれなかった。もちろん、わずか1分21秒後につけるフルームの動きも、絶対に見逃さなかった。

最終峠で最も厳しいラスト7kmに入り、やはり逃げていたスカイのダビ・ロペスガルシアが、するすると前から降りてきたタイミングだった。メイン集団に控えていたレオポルド・ケーニッヒが軽く加速を切り、フルームが本格的なペダル高速回転へと移行した。

長い長いアタックだった。ダンシングでも、シッティングでも、加速を繰り返した。ラトゥールに負けず、フルームは両手で足りないくらい試みた。しかしキンタナは、フルームの背中に、ただぴたりと張り付いたままだった。まさに不動だった。それでも7月のマイヨ・ジョーヌは、もはやタイム差を回復できないと悟っても、決して加速を止めなかった。フィニッシュライン間際で、マイヨ・ロホにスプリントで追い抜かれるまで--。

キンタナはタイムを詰められるどころか、新たに2秒のリードを奪い取った。背後ではフルームが、ライバルに拍手を送りながら、フィニッシュラインを静かに越えた。2014年ジロ覇者のナイロ・キンタナは、ついに2016年ブエルタの総合優勝に王手をかけた。この3度のツール総合優勝を誇るフルームは、どうやらマドリードでは、自身3度目のブエルタ総合2位を祝うことになりそうだ。

そしてチャベスがフィニッシュした1分24秒後に、コンタドールが山頂へたどりついた。こうして今ジロ総合2位のコロンビア人は、1分11秒差の遅れを見事なチームワークでひっくり返し、総合表彰台の上から3番目の位置を確保した。グランツール総合7冠の王者は、たった13秒足りずに、総合4位に陥落した。33歳のコンタドールは、グランツール表彰台では、いまだてっぺん以外の場所に上ったことがない。

別府史之も新城幸也も、ひどくめまぐるしかった3週間の戦いを、無事に乗り越えた。あとはマドリードでの最終スプリントへと向かうだけだ。

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